「みんな最後の詰めが…」駒澤大はなぜ出雲3連覇を逃したか? “唯一の勝てる展開”アンカー勝負での敗因と光明「そこが篠原の甘いところ」
篠原のレース運びは万全だったか
「今回の負けは、篠原の責任ではない。そこまでリードを作れなかったのが敗因です」 藤田監督はそう言うものの、篠原のレース運びに、エースらしからぬ甘さがあったことも否めない。 4秒差を詰めて平林に追いついた後の展開だが、あそこでなぜ並走だったのか。 1.4キロ地点で篠原は平林に追いついた。そこからのセオリーは、まずは相手の背後について走ることだ。うしろにつけば相手の力をうまく使って走ることができ、相手の様子を見て、自分から仕掛けられる。戦術的に優位に立てるが、篠原は、うしろにつくのは御免とばかり、真っ向勝負を挑んだ。確かにそこにはエースの矜持を感じるが、藤田監督は別の見方をしていた。 「並走したのは、うしろについてラクはしないという、プライドがあったからでしょう。でも、並走すると表情を見られるんです。顔が歪んだら相手に行かれるわけです。でも、うしろにつけば余裕なのか、きついのか見えない。勝つためには、そこは割り切って自分が優位に立って仕掛ける展開をしないと……。でも、逆に相手に表情を読まれ、揺さぶられて突き離されてしまった。レースは、そんなに簡単に勝てるもんじゃない。平林の術中にハマってしまいました」 トラックでのスピードは篠原が圧倒的に強いので、背中についていき、ラストで勝負をかければ負ける要素はほぼなかった。勝ちに徹したエースらしいレースを藤田監督は期待したが、プライドなのか、何なのか……勝ちたい気持ちはあったはずだが、冷静に勝負に徹することができなかった。 「そこが田澤や(鈴木)芽吹と違って篠原の甘いところでもあります」 藤田監督が思い出すのは、2020年の全日本大学駅伝のレースだ。8区のアンカーで田澤廉(駒澤大)と名取僚太(東海大)のマッチレースになった。藤田は「早く行け」と思っていたが、田澤はうしろについてじっと我慢し、名取の様子を見て、自分が出るタイミングをうかがっていた。そして、ラスト1.2キロになった時、勝負とばかり一気に前に出た。 「これができるかどうかなんですよ。その瞬間瞬間で自分で判断して、勝負して、勝たないといけない。やっぱりチームを勝たせないとエースではない。駒澤のエースになるために田澤も芽吹も苦労して、乗り越えてきた。篠原が駒澤でエースを張るのであれば、この悔しさを乗り越えていかないといけない」 藤田監督は、期待感を込めて、そう言った。
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