「みんな最後の詰めが…」駒澤大はなぜ出雲3連覇を逃したか? “唯一の勝てる展開”アンカー勝負での敗因と光明「そこが篠原の甘いところ」
「すいません」 駒澤大のエースは、ゴール後、頭からタオルをかけ、仲間の肩を借りて出雲ドーム内を歩いていった。待機所に着くとそのまま倒れ伏し、顔にタオルをかけ、声を出して涙した。周囲の選手は、信じられないという表情で、茫然とその場に立ち尽くしていた。 【写真】「詰めが甘かった…」悔しげにゴールする駒澤大・篠原や微妙な表情の藤田監督、柏原・神野ら山の神に黒縁メガネの大迫傑…箱根駅伝スターの名シーンまで全部見る 第36回出雲駅伝は、6区で篠原倖太朗(4年)とトップの平林清澄(國學院大・4年)のアンカー勝負になった。「どこでも30秒差以内なら勝てる」と駒澤大の藤田敦史監督が大会前日に述べていた理想的な展開に持ち込むことができた。だが、5キロ地点手前で平林が前に出ると、篠原はそのまま突き離され、勝敗が決した。
駒澤が勝てる、唯一の展開だった
今回、駒澤が勝てる唯一の展開になったのに、なぜ敗れたのか――。 「チームとしての弱さがまだあるなということです」 藤田監督は、そう語る。 6区の篠原に繋ぐまでは、よく粘った。1区の桑田駿介(1年)から2区の帰山侑大(3年)までは6位だったが、3区の山川拓馬(3年)が区間2位の走りでチームを2位に押し上げた。4区の伊藤蒼唯(3年)でトップに躍り出ると、5区の島子公佑(2年)も区間2位の走りを見せ、トップは國學大に譲りながらも4秒差で6区の篠原に襷を渡した。順位変動とレース展開を見れば、実に粘り強く戦っていると言えるだろう。だが、勝つために細部にこだわるという点では、残り500mのところに、藤田監督がいう「弱さ」が垣間見えた。 「2区の帰山から5区の島子まで、最後のところで、みんな、突き放されたり、詰められたりしているんです」
「勝利への執着心が…」
山川は、黒田朝日(青学大・3年)と競り合ったが最後、4秒差をつけられて先行された。伊藤は宇田川瞬矢(青学大・3年)を抜いてトップに立ったが、一度は離した野中恒亨(國學大・2年)に差を詰められた。島子も上原琉翔(國學大・3年)とラストの勝負に敗れ、4秒差をつけられた。各区間で積み重ねられたビハインドがエースの走りに微妙な影響を与えたように見える。 「みんな、悪くはないんですが、最後のところですよね。そこで突き放したり、競り勝てれば、最後の篠原のところに30秒ぐらいの貯金を持ってこれたんです。そうすればうしろから平林が来たとしても余裕を持って走れたと思うんですよ。勝つために個々の選手がそれができなかったのは、チームとして弱さがあるなと思いますし、勝利への執着心が足りなかったと思います」 藤田の指摘は、山川も理解していた。 「自分の区間で1位になって襷を渡せれば流れが変わったと思うんです。でも、区間賞も取れず、最後に黒田に前に行かれたのは詰めの甘さが出たと思います」 島子も反省しきりだ。 「やっと駅伝の舞台に立てたと思って思い切っていったんですが、まだスタミナが足りなくて、最後離されてしまって。トップで篠原さんに渡せなかったのは、本当に悔しかったですし、まだまだ甘いなと思いました」 個々が感じた甘さをどう厳しさに転化し、ラスト500mの勝負にこだわれるか。これは全日本大学駅伝に引き継がれる課題になる。
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