なぜ森保監督はドイツ遠征にE-1選手権組を緊急招集したのか?
森保監督は板倉に代わるセンターバックとして、A代表での出場歴がない瀬古を抜擢した。しかし、板倉に代わるアンカーは新たに招集されていない。 保存療法を選択した板倉が、カタール大会に間に合えば問題はない。ドイツ遠征で選外になった大迫、板倉、右膝内側側副じん帯を断裂したFW浅野拓磨(27、ボーフム)の今後に関して、森保監督もポジティブに言及した。 「これからどのように回復していくのかがわからない部分があるが、見通しではワールドカップ本大会にはしっかりと戻り、選考対象になる状態だと聞いている」 ドイツ遠征のメンバーがすべてではない、とする方針は変わらない。それでも酒井と同じく、不測の事態に備えて手を打っておかなければいけない。リスクマネジメントの原則に立った上で、アンカーとしての板倉の代わりを招集しなかったのは、以前から招集してきた選手の起用にめどを立っているからだろう。 ワールドカップ出場を決めた後の“消化試合”となった3月のベトナム代表戦では、柴崎岳(30、レガネス)がアンカーとして先発した。しかし、守備面の強度における柴崎の物足りなさを考えれば守田英正(27、スポルティング)が浮上してくる。 守田は田中碧(24、フォルトゥナ・デュッセルドルフ)ともに、インサイドハーフの主軸を担ってきた。3月シリーズ以来となる復帰を果たし、インサイドハーフ候補の一人に新たに加わった旗手に指揮官はこう言及している。 「東京五輪チームで大学生のころから彼を見てきた。常に成長が見受けられるなかで、直近であればチャンピオンズリーグのレアル・マドリー戦でもすごくいいパフォーマンスを見せていた。彼自身が結果を出して今回の招集をつかみ取ったと思っている」 大迫だけでなく6月シリーズで軸にすえた浅野を欠く最前線でも、古橋亨梧(27、セルティック)や前田大然(24、同)、上田綺世(24、セルクル・ブルージュ)に町野、場合によっては南野を加えた陣容から最適解を見つけておかなければいけない。 いずれにしてもカタールワールドカップに臨む代表メンバー26人は、ドイツ遠征に招集された30人に故障離脱中の3人を合わせた選手たちに絞られたといっていい。 ヨーロッパのシーズンの真っ只中に開催されるカタール大会では、従来のワールドカップのように十分な事前キャンプを行う時間的な余裕がない。必然的に濃密な内容にしなければいけないドイツ遠征のテーマを、指揮官はあらためて掲げた。 「これまでも誰かが怪我やアクシデントで来られなかったときに、チームとして誰とでも組み、そして勝つと常に言い続けてきた。誰かがいないときにチーム力が落ちるのではなく、そこでもチームを機能させていける自信を持って戦っていけるように、チーム一丸となってコンセプトを共有しながら準備して戦いに臨みたい」 ワールドカップ代表発表前では最後となる活動に臨む代表メンバーは、遠征の舞台となるデュッセルドルフ市内で19日に始動。ともにカタール大会に出場するアメリカ代表と23日に、エクアドル代表とは27日にデュッセルドルフ・アレーナで対戦する。 (文責・藤江直人/スポーツライター)