新型BMW X3はヒット間違いナシ 4代目も完成の高いSUVだった
フルモデルチェンジした新型BMW「X3」に、大谷達也がひと足早くドイツ本国で試乗した。日本でも人気の高いSUVの進化に迫る。 【写真を見る】新型X3の内外装など(114枚)
ディーゼルも継続設定
BMW X3がフルモデルチェンジを受けて4代目に生まれ変わった。 ミドルサイズSAV(BMWはSUVのことをSAV=スポーツ・アクティブ・ビークルと呼ぶ)のX3は、BMW全車種のグローバルセールスでトップに位置する人気モデル。2003年に初代を発売して以来、累計で350万台以上を販売した実績を誇る。その扱い易いサイズゆえにX3は日本でも人気で、グローバルな販売台数に占める比率はアメリカ(41%)、ドイツ(13%)、イタリア(4%)に続く3%で4番手につけている。 新型は従来からのエンジン縦置き用アーキテクチャーを改良して採用。2.0リッター直列4気筒のガソリンエンジンとディーゼルエンジンのほか、3.0リッター直列6気筒ガソリンエンジンを積むハイパフォーマンスモデルや2.0リッター直列4気筒ガソリンエンジンにプラグイン・ハイブリッドシステムを組み合わせたモデルなどがラインナップされる。 このうち、日本では2.0リッター・ガソリンエンジンを積む「20 xDrive」、2.0リッターディーゼルエンジンを積む「20d xDrive」、3.0リッター直列6気筒ガソリンエンジンを積む「M50 xDrive」などが販売される見通しだ。 なお、これまでガソリンエンジン搭載モデルには、たとえば20i xDriveの“i”の文字が添えられていたが、先に紹介した1シリーズ同様、こちらもiが外れて20 xDriveとシンプルなネーミングとなった。 また、新型はプラグイン・ハイブリッドを除く全モデルに48Vマイルド・ハイブリッドシステムを搭載することもニュースのひとつだ。
今年中に日本導入へ
エクステリア・デザインは、ひと足先に紹介した1シリーズとは異なり、BMWの最新デザイン言語をふんだんに採り入れたものとなっている。キドニーグリルは縦長で存在感の強いデザインとされたほか、そこから連なるように設けられたヘッドライトは、キリッとした表情を見せる。 一方、ボンネットからボディサイド、さらにリヤエンドにまで至るボディーパネルの面作りは、どちらかといえば穏やかで曲面が主体。このためボディーの一体感が強く表現されたデザインとなっている。同様の面作りは「iX」にも見られるもので、BMWはこれをモノリシック(「一枚岩でできた」の意味)と、呼ぶ。いかにもモダンな造形で若者受けするように思える。 まずはM50に試乗した。 スタート/ストップボタンを押してエンジンを始動させても、車内は実に静かで振動は感じられない。そのまますっとアクセルペダルを踏み込んでも、ほぼ無音のままM50は走り始める。最高出力381psのエンジンを積むハイパフォーマンスモデルであることがにわかには信じられないほどの静けさである。 ただし、これは効率重視のエフィシエンシーモードを選んだ場合の話。試しにスポーツモードを選ぶと、かなり勇ましい音が聞こえ始める。しかも、フロアやステアリングにまで微振動が伝わってくるので「ひょっとしてスピーカーでエンジン音を強調している?」なんて想像までしたくなるほどだ。 電子制御式可変ダンパーを装備している関係で、乗り心地もモードによってはっきりと変化する。エフィシエンシーモードなどでは快適と思えた乗り心地も、スポーツモードではハッキリを足回りが硬くなるので、ワインディングロード以外で選ぶのはちょっとためらわれるほど。それだけにスポーツモードはダイレクトでレスポンスのいいハンドリングが楽しめる。 エンジンは低回転域からパワフルでレスポンスも良好だが、なぜか5000rpmを超えた領域ではパワーの伸び感が薄く感じられた。また、BMWのストレート6らしい滑らかな回転フィールが乏しいのも意外だった。 続いて試乗した20は、M50に比べれば全般的に軽快で快適な乗り心地が味わえる。それでいてステアリングは十分に正確。試乗当日はときおり雨足が強まる雨模様だったが、そんなコンディションでもまったく不安を覚えなかった。ただし、いかにも足回りが精密にコントロールされている印象のM50に比べると、かすかにあいまいな感触が伝わってきたのも事実。4気筒特有のざらついた回転フィールを伝える点も、M50とは明確に異なっていた。 クルマとしての完成度はM50が20を凌ぐが、そのM50にしてもストレート6らしい滑らかさとトップエンドの伸び感が得られなかったのは残念。この辺は、今後のデビューが見込まれるフラッグシップモデルのX3 Mに期待するべきなのかもしれない。 新型X3は早ければ今年11月中にも国内発表となる見通しだ。
文・大谷達也 編集・稲垣邦康(GQ)