「史上最高」のロード・ポルシェ 718スパイダー RSへ試乗 カップカー・エンジンを軽いミドシップに!
718ボクスター GTSと911 GT3の魅力を融合
前置きが長くなったが、2023年のアルプス山脈で、718スパイダー RSは胸が打たれるほど素晴らしい走りを披露した。アスファルトの傷んだグレートブリテン島で、同じくらい楽しめるのか疑問を抱いたが、完全に杞憂だった。 718ケイマン GT4 RSよりサスペンションは優しくても、通常の718ボクスターより車高は30mmも低い。トレッドは拡幅され、ネガティブキャンバーは強い。沢山のボールジョイントで結ばれてもいる。間違いなく、活き活きとしている。 この島国の道を、完璧に受け入れられるわけではない。それでも、GT4 RSとは比較にならないほど寛容。乗り心地がしなやかだとは表現できないものの、ガツンというノイズは聞こえてこない。 マナーはアグレッシブだが、手を焼くほどではない。速度域が上昇するほど、身のこなしには落ち着きが出てくる。タイヤは路面へ追従し、確実に掴み続ける。 718ボクスター GTS級のしなやかさに、911 GT3級の痛快なステアリングとパワー感を融合させつつ、世界最高水準のエンジンをシャシー中央に搭載したポルシェ。それが718スパイダー RSだと表現できる。 連続するカーブへ意欲的に侵入すると、GT4 RSより身のこなしはエレガント。ドライバーには一層のフィードバックが伝わり、楽しさも比ではない。 ダンパーには2段階の設定がある。デフォルトはソフト側だが、滑らかさと姿勢制御のバランスは秀抜。ハード側へ切り替える必要性は、まったくない。
RSを冠した史上最高のロードカーの1台
もちろん、レーシングカー由来の4.0Lフラット6は、フェラーリ製ユニットにも劣らぬ魅力で満ちている。レッドラインが迫るほど、張り詰めた吸気音が、胸が苦しくなるような勢いで高まる。 7速デュアルクラッチATが鋭くシフトアップすると、その音響で再びドライバーは包み込まれる。今購入できるポルシェの中で、最もドラマチックでスリリングなモデルだといっていいだろう。 最速ラップタイムを狙っていなくても、コミュニケーション力とレスポンスは確かに「RS」級。つまり、RSを冠した史上最高のロードカーの1台だ。
ポルシェ718スパイダー RS(英国仕様)のスペック
英国価格:12万3000ポンド(約2460万円) 全長:4417mm 全幅:1994mm 全高:1252mm 最高速度:307km/h 0-100km/h加速:3.4秒 燃費:7.7km/L CO2排出量:294g/km 車両重量:1410kg パワートレイン:水平対向6気筒3996cc 自然吸気 使用燃料:ガソリン 最高出力:500ps/8400rpm 最大トルク:45.8kg-m/6750rpm ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック(後輪駆動)
リチャード・レーン(執筆) 中嶋健治(翻訳)