目指すのは「当時らしさ」。自宅もファッションも遊びも徹底して昭和で埋め尽くす「昭和マニア」の暮らし
昭和のものが消えていく速度を落としたい
――平山さんの好きなものが詰まったこのご自宅で、特に一番好きな場所はどこですか。 平山さん 僕が暮らす以前には、老夫婦が暮らしていたようです。天井の柄もかわいいし、すべて気に入っているのですが、特に暖炉がある応接間が好きですね。昭和中期に作られたものの根底にある、海外の雰囲気と日本人のセンスが融合されている雰囲気がこの家にもあります。購入してから一度もリフォームはしていませんし、模様替えもほぼなし。手を加えてしまうと理想的な空間ではなくなってしまうのがもったいないですから。このシャンデリアももともと取り付けられていたものなんです。昭和中期に流行した幾何学模様が描かれています。 ――壁が板張りで重厚感がありますね。 平山さん ぐっときますよね。たまに、古いものに囲まれて不便ではないかと聞かれることもありますが、昭和に作られたものは機能がシンプルなので壊れにくいものも多いし、使いやすいんです。なので不便さは感じません。昭和に作られたものは、いつかは消えていってしまうかもしれません。でも僕みたいに昭和を愛する人たちがそれらを大切に使うことによって、消えていくペースは落とせるのではないかと信じています。 この「昭和ハウス」で暮らしていると一日中、ワクワクしてられるのが何よりの幸せ。飽きることがありませんし、好きなものに囲まれて暮らすのは一つの快感でもあります。
昭和を探しに1ヶ月放浪
――純喫茶や酒場など、昭和の雰囲気が残る店も今は大人気ですよね。 平山さん 僕もそういった店が大好きで、地方まで赴くこともあります。旅の目的になるのもやっぱり昭和。昭和を求めて1ヶ月ほど放浪旅をすることも。純喫茶だったら名古屋か大阪、市場なら福岡。街によって、残っている昭和の香りが異なるのも面白い。訪れて記録したスポットは2200箇所以上にもわたります。 出来ることなら昭和に戻りたいですが、戻ることはできないので自分の生活だけでも昭和で満たしています。 平山雄(ひらやま・ゆう) 昭和好きが高じて2005年に昭和中期に建てられた一軒家を購入。家電や電化製品から小物類まですべて昭和時代製で揃え、完全に昭和の家庭を再現して暮らしている。休日は昭和が体感できる飲食店や街並みを訪問し、ブログ「昭和スポット巡り」でレポートしている。著書に『昭和遺産へ、巡礼1703景』、『昭和喫茶に魅せられて、819軒』がある。 『昭和ぐらしで令和を生きる』 定価 1,870円(税込) 303BOOKS
高田真莉絵