〈兵庫県知事選〉斎藤前知事、猛追の背景に「当選を目指さない」NHK党・立花氏との“二人三脚”…異例の選挙戦は「割れる自民票」がカギに
斎藤元彦前知事(47)の失職に伴い、11月17日に投開票が行なわれる兵庫県知事選挙は、自民党県議の多数派と立憲民主党などが推す前尼崎市長・稲村和美氏(52)を、再出馬した斎藤氏が猛烈に追い上げている。「当選を目指さない」と言いながら立候補し、斎藤氏を応援する演説を繰り返すNHK党党首・立花孝志氏がネットで持つ影響力が、斎藤氏を後押しする異例の選挙戦となっている。 〈画像〉立花孝志氏と記念撮影をして喜ぶ女性
NHK党・立花氏登場に「来た、来た」
「いろんな人から『辞めてくれ』と言われました。でも僕が今までやってきた政策、方向性は決して間違っていなかった。『絶対にやめるわけにはいかない』、そんな思いでこの半年間、歯を食いしばってがんばってきました」 11月12日夜、JR加古川駅前で斎藤氏がそう訴えた場にも300人超とみられる聴衆が集まり、拍手と「負けるなー」との激励が飛んだ。 だが斎藤氏の演説で目を引くのは聴衆の多さだけではない。斎藤氏が現場を離れても、半数以上の聴衆はその場を動かない。約5分後、「来た、来た」の声と拍手が上がる。 到着したのは黄色い選挙カーに乗ったNHK党党首の立花孝志氏だ。マイクを握ると「NHKをぶっ壊ーす」とのキメ台詞を言った後、「斎藤氏は陥れられた」と訴える演説を始めた。 「(斎藤氏は)名誉棄損のビラまかれたのだから、犯人をとっとと捕まえるのは当たり前。あれ、(告発者の元県民局長を)殺したのは県議会の奴らですからね」(立花氏) 立花氏の言葉は何を指すのか。 3月に当時の兵庫県庁・西播磨県民局長Aさん(60)が、「斎藤知事はパワハラやタカリを繰り返しており、不審な公金支出もある」との告発文書をメディアなどに送った。送付者を特定した斎藤知事らはAさんに懲戒処分をかけたが、告発に信ぴょう性があるとみた県議会は調査特別委員会(百条委)を設置し、調査に乗り出した。 ところがAさんは7月に急死。「一死をもって抗議する」との言葉を遺しており、自死とみられている。 その直前には、当時の県幹部がAさんの公用パソコンの中にあった個人情報を持ち歩き、県議の一部が百条委での公開を要求していた。Aさんはこの個人情報が出回るのを恐れ、百条委側に公開しないよう求めていた。 公益通報者保護法が内部告発者探しを禁じていることもあり、Aさんの死やその前後の県の動きを問題視した県議会は、斎藤氏が告発文書に不適切、不十分な対応をして県政を混乱させたとして9月に不信任決議を採択、知事失職と今回の再選挙につながっている。