「すべての経費を止めろ」ツイッター大変革のためにイーロン・マスクがとった「常識破り」の行動とは?
■ お金についての質問がいきなり飛んでくる データや経営指標など、数字についての質問もよく飛んできました。 たとえば「売上管理表はどこにあるの?」といったことです。こういう連絡には、Slackが使われました。 Slackは、オンラインになっている人にグリーンのマークが表示されます。だから、いま仕事中の人が把握できる。イーロンは、グリーンになっている人間に片っ端から連絡をしていくのです。時差などは関係ありません。その人が何の仕事をしているかだって、イーロン自身はわかっていない。 だから「なんで私に質問が来たんですかね?」ということがたまにありました。まわりに聞いてみると「お前の表示がグリーンになってたからじゃない?」と。イーロンに「えっ、私、そのファイナンスとぜんぜん関係ないんですけど」と返すと、「じゃあこれ、誰が知ってるの?」と聞かれる。「この人じゃない?」と言うと「そいつはもういなくなったから」なんて展開になることもありました。 特に最初の5週間は、本当に突拍子もないタイミングで突拍子もない内容の連絡が飛び交いました。だからSlackはカオスでした。メールは使われません。リアルタイムなやりとりがしづらく、まどろっこしいからです。とにかく時間が優先ということで、Slackでいきなり連絡が飛んできた。連絡は、イーロン本人から飛んでくることもあれば、彼のまわりの人からということもありました。 ■ ビデオ会議では「学びモード」 イーロンとはビデオ会議も週2回ぐらい、5週間にわたってやりました。 ビデオ会議のときのイーロンは、どちらかというと「学びモード」です。「いろいろ教えて」みたいなスタンスでした。また、抱えている課題についても早くから話していました。 たとえば、日本におけるTwitterの利用者が多いことは彼も理解していました。ただ、利用者に対する売り上げの比率はあまり高くないんじゃないか? 日本はまだまだ伸びしろがあるんじゃないか? という話もしました。 イーロンは「なぜそういう状況になってるのかを説明せよ」と言います。だから「どうやって伸びしろを現実化していくのか」を最初の1~2週間で議論しました。主要なポイントはわりと早く押さえて、それに対する問題解決策を議論するやりとりを、けっこう頻繁にやりました。 命令系統がハッキリしている会社のように、下から部長に行って、そこの担当役員に行って、CEOに行く、というようなやりとりはありません。イーロンから直接ボンと質問が来るのです。 このやり方がよかった面もあります。 普通は「これを言うと、あの部署の誰々はバツが悪いな」みたいなことをつい気にしてしまいます。でも、そんな忖度をしている暇がないのです。それを意識させないぐらい、頻繁にやりとりする。まわりに気を使うことは許されない。そうやって自然と組織の壁が取り払われていっている感覚がありました。
笹本 裕