凱旋門賞に挑むシンエンペラーの状態はいかに!? そして悲願達成への「意外な」ライバルとは?
ただ、9月15日に行なわれた前哨戦、ニエル賞で3着。同レースを勝ったソジーの後塵を拝したことで、同馬と人気を分け合って本番を迎えることになった。それでも、陣営の凱旋門賞への自信は揺らいでいない。 ルックドゥヴェガを共同で管理するヤン・レルネール調教師が「(ニエル賞で)負けはしたけけど、凱旋門賞を勝つためには必要なレースだった」と、前走の敗戦を何ら気にすることなく、視線を先に向ければ、主戦のロナン・トーマス騎手も「(凱旋門賞の)距離に不安はないし、馬場が重くなるようならチャンスですよ」と、確かな手応えを示して見せた。 一方、ソジーは7月に凱旋門賞と同じ舞台のGIパリ大賞(7月13日)で優勝し、先述したとおり、前哨戦のニエル賞でもルックドゥヴェガを蹴散らして快勝。抜群のコース適性を示している。 唯一気になるのは、近年ニエル賞の勝ち馬が凱旋門賞を勝っていない、ということだが、パリ大賞、ニエル賞を連勝してきた馬と言えば、2006年の凱旋門賞でディープインパクトをあっさり退けたレイルリンクがいる。そして何より、ソジーを管理するのは、凱旋門賞を8勝しているアンドレ・ファーブル調教師というのが最大のプラス要素だ。 鞍上のマキシム・ギュイヨン騎手は大一番を前にして、「(今年の凱旋門賞は)断然の存在がいないレース。できれば、馬場については前走ぐらいがいいですね」と慎重な姿勢を崩さなかったが、最後には「(ソジーは)どの位置でも自在に競馬できるのが強み」と、秘めた自信を漂わせていた。 この2頭のほかにも、一発を狙う曲者がズラリ。そのうち、シンエンペラー陣営にとって特に怖い存在になりそうなのが、武豊騎手が騎乗するアイルランドのアルリファー(牡4歳)だ。 3歳時のGIIギヨームドルナノ賞(ドーヴィル・芝2000m)では、前出のエースインパクトと差のない2着に入線。4歳となってからも、2走前のGIエクリプスS(7月6日/サンダウン・芝1990m)で今年の欧州3歳最強馬とされるシティオブトロイの2着と好走し、前走のGIベルリン大賞(8月11日/ホッペガルテン・芝2400m)では圧倒的1番人気に応えて5馬身差の圧勝劇を演じている。 武豊騎手の凱旋門賞への想いはもはや言うまでもないが、キズナと挑んだ2013年の凱旋門賞ではオルフェーヴルを外から封じようとしたように、ここ一番での"キラー"ぶりには目を見張るものがある。日本競馬にとっての悲願達成は、競走馬より先に騎手が果たしても不思議ではない。 いずれにしても、今年も見どころ満載の凱旋門賞。ゲートインまで、まもなくである。
土屋真光●取材・文 text by Tsuchiya Masamitsu