凱旋門賞に挑むシンエンペラーの状態はいかに!? そして悲願達成への「意外な」ライバルとは?
その一因には、シンエンペラーの全兄が2020年にこのレースを制したソットサスということがある。加えて、同馬の鞍上だったC・デムーロ騎手がシンエンペラーの追い切りに2度騎乗し、「(シンエンペラーは)ソットサスにそっくり」と太鼓判を押したことも、そうした評価につながっているのだろう。 無論、シンエンペラーがその評価に応える可能性は十分にある。それを後押しする材料のひとつは、偉大な兄が戴冠を遂げた時と同じ臨戦過程だ。兄ソットサスは3歳時、本番と同じ舞台のGIIニエル賞(1着)をステップにして3着に終わったが、翌年は今回のシンエンペラーと同じくアイリッシュチャンピオンS(4着)からの臨戦で頂点に立った。 「ニエル賞はメンバーがそろっても厳しい競馬にはなりにくいので、"本番に向けて"という意味では、コース経験以外は糧になりにくいのかもしれません。翻(ひるがえ)って、アイリッシュチャンピオンSはGIで、2000m戦ですから、流れも攻防も厳しくなります。その経験が本番で活きるのだと思います。 つまり、悲観するような内容でなければ、そこでの着順は関係ありません。これは、シンエンペラーにも言えるのではないでしょうか」(C・デムーロ騎手) 過去30年を振り返っても、3歳になって未勝利の馬が凱旋門賞を勝ったケースは一度もない。だがそれ以前に、そもそも凱旋門賞は欧州以外の調教馬が勝ったことがない。その分厚い牙城に挑むことを考えれば、どんなデータも些末なものに感じてしまう。 シンエンペラーを管理する矢作芳人調教師、鞍上を務める坂井騎手、そしてオーナーの藤田晋氏による"トリオ"は、追い切りが行なわれた夜、日本の大井競馬場で前祝を果たしている。地方交流GIジャパンダートクラシック(10月2日/ダート2000m)をフォーエバーヤングで制したのだ。この勢いに乗って、パリの地でも美酒を味わうことができるのか、大いに注目である。 とはいえ、欧州トップクラスの集う最高峰の舞台である。頂点を目指すシンエンペラーの前には当然、手強いライバルたちが待ち受けている。 なかでも強力なのは、主要ブックメーカーで1番人気を分け合っている地元フランスのルックドゥヴェガ(牡3歳)とソジー(牡3歳)だ。 ルックドゥヴェガは、3戦無敗でGIフランスダービー(6月2日/シャンティイ・芝2100m)を勝利。その勝ちっぷりと、昨年も無敗のフランスダービー馬エースインパクトが凱旋門賞を制したことから、早々に断然の1番人気に支持された逸材だ。