低体重赤ちゃんの命救う「ドナーミルク」 利用促進へ東京都が支援検討…医療機関の補助など 来年度予算案
小さな体で生まれた赤ちゃんに、一部の医療機関ではほかの母親から寄付された母乳が「ドナーミルク」として使用されています。命を救うために有効とされているもののその普及には医療機関が支払う費用負担の壁があり、東京都はこのドナーミルクの利用促進のため、来年度から補助金を使った支援を検討しています。 10日の都議会定例会で、小池都知事は早産児らにとって母親の母乳が与えられない場合に、ドナーミルクはその命と成長のために必要なものだとして、「ドナーの登録や、ドナーミルクを使用できる施設を一層確保するための方策を検討していく」と述べました。 都の担当者によりますと、支援の背景には近年、高齢出産の影響や医療技術の進歩で、低体重で生まれてくる赤ちゃんの割合が高くなっていることがあるといいます。 このドナーミルクは全国から寄付された母乳を「母乳バンク」で低温殺菌処理し、医療機関に提供されているものです。赤ちゃん側は無償で利用できる仕組みです。 特に体重1500グラム未満で生まれた赤ちゃんは、臓器が未熟なため、粉ミルクでは腸が壊死してしまう危険性があり、早い段階で、消化吸収しやすい母乳を栄養として与えることがよいとされています。 ところが、予期せぬ早産などで精神的な負担から母親の母乳が十分に出ないなどのケースもあり、そうした際に赤ちゃんの命をつなぎ止めるのが「ドナーミルク」の役割です。
しかし、都によれば、低体重の赤ちゃんを受け入れるNICU(=新生児集中治療室)がある都内34の医療機関のうち、ドナーミルクを使用できるのは、その半分の17の医療機関のみにとどまっているということです。(今年4月時点) そして、その要因のひとつが医療機関が支払う年間最大120万円の利用料などの費用負担の大きさだといいます。 東京都は来年度の予算要求として3200万円を計上し、ドナーミルクの利用料やドナー登録時の検査や事務費用の補助支援を行うことで医療機関の負担を軽減し、利用促進を図りたい考えです。 ドナーミルクを提供する日本母乳バンク協会の水野克己代表理事は、「都が支援してくれることで、医療現場が母乳バンクを使いやすくなるのは大変ありがたいこと」と話しています。 一方で、利用が増えることによる課題もあり、寄付された母乳を安全に届けるための処理を担う人材の確保や、ドナー登録ができる施設の数を増やすことなど、限られた資金の中で提供体制の強化も図っていかなければならないということです。 全国に、ドナーミルクを必要とする赤ちゃんは年間約5000人いるとされ、その命を救う仕組み作りが早急に求められています。