豪雨後急ピッチで進む能登半島の公費解体「次の壁」は雪 39%完了、進捗に地域差
10万棟以上の家屋が損壊した能登半島地震の被災地では、公費解体が急ピッチで進み、石川県では年内の中間目標だった1万2千棟を超えた。当初は進捗(しんちょく)の遅れが問題化したが、9月の豪雨後に解体作業班を約1200班まで増やしペースアップした。地震から間もなく1年となる中、懸念されるのは積雪による作業の遅れだ。進捗の地域差も無視できず、来年10月までに目標通り完了できるか見通せない。 【写真】平成26年に撮影した輪島朝市。人が行き交い活気に満ちていた 石川県によると、12月22日時点の解体数は1万3547棟となり、申請数3万4482棟に対する割合は39・3%。「年末までに『景色が変わった』と実感してもらうことが重要」として掲げた中間目標は超えた。 発生半年後の6月末時点で、県内の解体見込み棟数に対する「解体率」は、わずか3・3%だった。解体申請や審査の手続きに手間取ったことが主な要因とされた。 政府は5月から解体を進める対策に乗り出す。相続登記がされないなどの理由で所有者が多数いる物件について、法務、環境両省は全員の同意がなくても解体を進められる「滅失登記」の枠組みを提示。国土交通省は解体業者を全国から集め、海上輸送を駆使して災害廃棄物を広域で処理した。 解体率は7月ごろから上向き始め、9月の豪雨後に作業班も増強。10月末には3割を突破した。 ただ、冬季は降雪の影響から作業のペースダウンは必至だ。豪雨で被災した建物に関する申請も今後増える見通しで、馳(はせ)浩知事は「来年1月中に解体計画を見直す」としている。 ■遅れには事前の想定不足も影響 公費解体を巡っては、自治体による差も顕在化する。石川県輪島市の解体率は被災地では最低の25・1%(11月末時点)。ペースを上げるため作業班は最多の約350班が入る。市の担当者は「積雪で作業ができなくなる恐れがあるので、山間部を優先せざるを得ない。結果として市街地にはまだ倒壊家屋が残っている」と説明する。 同じ被災地でも珠洲(すず)市の解体率は最高の48%(同)。県によると、同市では比較的早く解体工事の発注があり、地区ごとに複数班を投入して効率的に作業を進めた。こうした地道な取り組みが奏功したとみられる。