建築界の「本屋大賞」⁉ みんなの建築大賞とは?
1年間のベスト建築を一般投票により選ぶ、これまでにない “身近な” 建築賞が誕生しました。 【フォトギャラリーを見る】 山本理顕が日本人9人目となるプリツカー賞の栄誉に輝いた、そのひと月前、日本発の新しい建築賞が誕生したのをご存じだろうか? その名も「みんなの建築大賞」。文字通り、多くの人々に開かれたアワードを目指しており、建築界における「本屋大賞」をイメージしたと事務局の宮沢洋さん(建築ネットマガジン『BUNGA NET』代表)は話す。 「業界だけの話題に留まり、一般に知られる機会がほとんどなかった従来の賞の形では、正直もったいないと思っていました。多くの人に建築の魅力や、その文化的価値を伝えるためには、一般参加型にするのがよいと考えたんです」
選考の流れはいたってシンプルだ。“建築を伝えるプロ”である雑誌の編集者や建築史家ら約30人からなる推薦委員会が、前年に完成・発表された建築の中から「この建築がすごいベスト10」をセレクト。Xで発表し、2週間の投票期間中に「いいね」を最も多く獲得した作品が大賞となる。 栄えある第1回、2023年の大賞に選ばれたのは、2143票を集めたVUILDの〈学ぶ、学び舎〉。〈天神町place〉、〈花重リノベーション〉がそれに続いた。なお、ベスト10の選考会で最も評価の高かった〈天神町place〉には、特別賞「推薦委員会ベスト1」が与えられている。
「玄人好みにも思える作品がきちんと評価されている点がうれしいですね。VUILDの代表・秋吉浩気さんが率先して選挙活動したというのも面白い。設計者自らが行動・発信する時代なのだと思います」 来年はXに加えて、インスタグラムでの投票も検討中。あなたも清き一票を投じてみませんか?
みんなの建築大賞
賞の趣旨に賛同した文化庁も広報に協力した。写真は、2月15日に〈国立近現代建築資料館〉で行われた表彰式の様子。左から、推薦委員長の五十嵐太郎さん、秋吉浩気さん、伊藤博之さん、同館館長の寺本恒昌さん。photo_Jun Kato
この建築がすごいベスト10
● 熊本地震 震災ミュージアム KIOKU 大西麻貴+百田有希/o+h・産紘設計 ● 52間の縁側 山﨑健太郎/山﨑健太郎デザインワークショップ ● 後藤邸 後藤武+後藤千恵/後藤武建築設計事務所 ● SIMOSE 坂 茂/坂茂建築設計 ● 太宰府天満宮 仮殿 藤本壮介/藤本壮介建築設計事務所 ● 地中図書館 中村拓志/NAP建築設計事務所 ● 天神町place 伊藤博之/伊藤博之建築設計事務所 ● 庭の床 福武トレス Fギャラリー 武井誠+鍋島千恵/TNA ● 花重リノベーション 高野洋平+森田祥子/MARU。architecture ● 学ぶ、学び舎 秋吉浩気/VUILD
photo_Satoshi Nagare editor & text_Ai Sakamoto