オリックスに3位指名された山口廉王（仙台育英）。身長193cm、体重97kgの超大型右腕 photograph by Asahi Shimbun

今年のドラフト会議でオリックスから3位指名を受けた仙台育英高、山口廉王(18歳)。身長193cm、体重97kgの超大型右腕。甲子園出場経験がなく、驚くべきことにピッチャーを始めてたった1年という“ナゾの剛腕”の正体とは……現地仙台で直撃取材した。【全3回の中編/前編、後編も公開中】 【現場写真】「マジで？オレ？」山口廉王が指名され本人ビックリの瞬間＆涙、涙の記者会見、ダイナミックすぎる193cmのピッチングまですべて見る ◆◆◆ 　フィジカルは正義――。 　これは仙台育英の「教義」である。山口廉王もその信奉者だ。 「正義っすね。フィジカルがないとやっていけないんで」 　山口は現在、ハーフスクワット(膝を半分程度折り曲げて伸ばす)で270キロのバーベルを持ち上げることができる。高校生だと200キロ前後でも感嘆されるレベルだ。したがって山口は下半身の強さだけならプロの世界でもすでにトップクラスと言っていい。 　高校最後の夏、92、3キロだった体重は現在97キロまで増えた。 　継続は山口の小さい頃からの習慣でもある。 「小さい頃から365日、野球をやっていた感じです。晩ご飯を食べてから、ティー打撃とかも3、4時間はやっていたんじゃないですかね。でも、嫌にならなかったです。好きなんで、野球が」

「ピッチャーになったのはわずか1年前」

　仙台育英入学後も野手と投手を兼任した。須江が話す。 「あんまり早い段階でしばるのもなんだし、彼の長打力は捨てがたかったですから」 　山口も打撃には自信を持っていた。 「とにかく当たったら飛ぶんで。当たれば普通にフェンス手前ぐらいまで届く感じです。低反発バットでもけっこう飛ぶなと思っていましたね」 　彼が野球人生において初めて軸足を投手に定めたのは高校2年の秋のことだった。 「僕から須江先生に言ったんです。投手に専念したいです、って。でも、そこから一気にではなくて、徐々に投手としての出場機会を増やしてもらった感じです」 　山口が本格的に投手としての道を歩み始めたのはわずか1年前のことなのだ。 「最近、やっとピッチャーとは、みたいなのがわかってきたんで。それも、ほんとにさわりの部分だけなんですけど」 　プロ入りするレベルの投手のキャリアとしては極端な短さだ。山口がロマン枠と表現されるゆえんは、彼に貼ってある若葉マークのせいでもあるのだ。