「ピッチャー歴たった1年、甲子園出場ゼロなのに…」オリックス3位指名のウラ側…193cm山口廉王(仙台育英高)とは何者か? 監督は「ドラ1候補でもおかしくなかった」
「足がこんなに震えるの?」初めてのマウンド
高校時代、山口の公式戦における登板は11試合しかない。 公式戦デビューは2年秋、宮城県大会の2回戦だった。相手は県内の最大のライバル、東北高校。山口の言葉が初々しい。 「ヤバかったですね。足とか、こんなに震えるの? みたいな。眺めも練習試合とはぜんぜん違って。観客もグラウンドレベルから見ると、こんなに圧があるんだとか。マウンドも高いなとか。全部が初めて過ぎて。公式戦で先発したの、おそらく野球人生で初めてだったんですよ。だから、どういう感じでマウンドに上がればいいのかわからなくて。打たれたときも頭が真っ白になりました」 5-2で勝利したものの、その試合の記憶はほとんどないという。この時点で山口は先発投手として素人同然と言ってよかった。 当時、山口の中には「投球術」という概念は存在しなかった。 「とことん腕を振って速いボールと、速い変化球を投げていればいいという感じでしたね。でも、そんなんじゃぜんぜん通用しなかった」
「投げちゃいけないボールがあるんだよ」
山口のスマートフォンの中には、今もお守りのように大切にしている動画がある。3年春の関西遠征で智弁和歌山戦に先発したときのものだ。 初回、一、二塁のピンチを招いたところで、山口は緩いカーブを痛打され、満塁としてしまう。その後、押し出しの四球を与え、この試合、唯一となる失点を許した。 そのとき、須江にこんなアドバイスを受けた。 「ランナーがいる場面で、投げちゃいけないボールがあるんだよ。先発ピッチャーがああいうことをしていたら勝てない」 須江に投げてはいけないと指摘されたのは安打された緩いカーブのことだった。 「僕は緩いカーブで空振りを取りたいと思ったんですけど、結果的に簡単に当てられちゃって。あそこは当てさせない配球を考える場面だった」 以降、山口は毎晩のように緩いカーブを打たれた場面の動画を見返した。 「ピッチャーは立ち上がりがいちばん難しいって言われるじゃないですか。だから、その動画を見ながら、毎日、先発のときはこういう気持ちで入って、こういうときはこういう配球をしてというイメージトレーニングをしていました。あそこから自分が変われたのかなと思っているんです。配球とかもすごく深く考えるようになったんで」
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