「アユ」が「ウ」をのみ込む「センスありすぎ」なお菓子 岐阜の「下剋上鮎」練られた設定
「いつまでも 食われてばかりじゃ いられない」ーー。水鳥の「鵜(ウ)」を操ってアユなどの川魚をとる伝統漁法「鵜飼」にちなんだお菓子「下剋上鮎」が、たびたびSNSで話題になっています。ユーモラスな見た目はもちろん、込められたストーリーが多くの人に響いているようです。発売元である岐阜県の老舗和菓子屋「玉井屋本舗」の担当者に話を聞きました。 【画像】SNSで話題のお菓子「下剋上鮎」 ウの表情がシュールすぎ
大河ドラマをきっかけに
2019年12月に発売された焼き菓子「下剋上鮎」。鵜飼で長らくのみ込まれ続けてきたアユが謀反を起こし、ウをのみ込む側になったというユニークな設定のお菓子です。 玉井屋本舗(岐阜市)で下剋上鮎などをプロデュースする白木佑典(ゆうすけ)さんによると、誕生のきっかけは2020年のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」でした。 「麒麟がくる」は美濃国(現在の岐阜県)生まれの武将・明智光秀が主人公。主君である織田信長を裏切り、「本能寺の変」を起こした人物です。 地域を盛り上げるため、大河ドラマをきっかけに玉井屋本舗でも関連商品を開発することになりましたが、ドラマや主人公にフォーカスしすぎては放送終了とともに旬が過ぎてしまいます。 そこで、長く愛される商品の火付け役として大河ドラマを足がかりにする案が出たそうです。2019年の初頭、プロジェクトが走り出しました。 明智光秀や下剋上といった大河ドラマにまつわるキーワードを押さえつつ、1908年創業の老舗である玉井屋本舗ならではの要素を重視。創業当時からあり、岐阜では玉井屋本舗が発祥と言われている和菓子「登り鮎」も参考にしたといいます。 「玉井屋本舗のそばには長良川が流れていて、県魚のアユが泳いでいます。長良川では1300年以上続くと言われる『鵜飼』の文化がある。下剋上鮎の開発チームとして、明智光秀、玉井屋本舗、鵜飼でストーリーが作れないかと考えました」と白木さんは話します。
若い世代に和菓子を知ってもらいたい
そして生まれたのが、「下剋上鮎」のストーリーです。 「令和の時代に入ったタイミングだったので、『ずっと食べられっぱなしだったアユ』が〝日本最大の下剋上〟を起こした明智光秀に感化され、『この時代こそは下剋上を起こしてやる』と思い立ったという設定にしています」 利用シーンは、スポーツなどで「下剋上(ジャイアントキリング)」を狙うときや、受験・就職活動の逆転合格祈願、ビジネスシーンでの験担ぎなど、人生の様々な「負けられない」局面で食べたり、プレゼントしたりすることをイメージしました。 企画段階から、SNSでの〝話題性〟も意識しています。 複合的な要素が合わさったストーリーやウのとぼけた表情、モダンポップな箱のデザインなど、「いかにSNSを使う若い世代を魅了できるか」にこだわって企画したそうです。 「120年近く続く老舗ですが、プロモーション費用はありません。いまはおもしろい商品や紹介したいことがあれば、ユーザー自らが投稿してくれるSNS全盛期です。自発的な投稿を生むための仕掛けをどう商品に落とし込むかが事業上のテーマでもありました」 「若者の伝統産業離れが言われていますが、和菓子も若い人たちに身近とは言えません。SNSを使って解決できることはないかと考え、具体化した商品が『下剋上鮎』です。和菓子業界として若者にアクセスするための手法に挑戦しました」