「寿命を決める臓器」である一方、ダメージを負ってもほとんど症状が現れない「腎臓」の機能低下を示す兆候5つ
■腎臓は、意外と「タフな臓器」でもある ここまで読んでいただき、腎臓に不安がある方には「やっぱりもうダメかもしれない」と思われる方もいらっしゃったかもしれません。しかし、そんな方にお伝えしたいのは「心配し過ぎないでください」ということです。 20~30代の頃の腎臓の機能を100%とした場合に、「10%が残っていたら、普通の生活を送るには十分です」と言われたら、驚かれるでしょうか。 じつは、腎臓は意外とタフです。たとえば、「生体腎移植」といって、ふたつある腎臓のうちのひとつを、親族から提供してもらう治療法があります。腎臓を提供した人(ドナー)は腎臓がひとつになりますが、機能はほぼ正常に保たれ、健康に暮らせています。
腎臓は生命を維持するうえで重要な役割を果たしていて、ほかの臓器よりも潜在能力は高いのです。年齢を重ねるとともに腎臓の機能は低下していくものの、もともと余力はあるので、本来であれば厳しい食事制限や服薬、透析などを行わずに、私たちは寿命をまっとうできます。 たとえ高齢になって、健康診断で腎臓の機能を示す数値が少々悪くなっていても、食生活や生活習慣を改善するなどして腎臓のメンテナンスを心がければ「もうダメだ」と悲観する必要はないということです。
ただし、糖尿病や高血圧、偏った食習慣などで腎臓を痛めてしまったら、若くても腎臓の機能は落ちてしまいます。私の元を訪れる患者さんたちの中には、まだ40代前半にもかかわらず糖尿病などの治療を怠って、腎臓が取り返しのつかないほどダメージを受けてしまい、「こんなことになるなんて、知らなかった」と後悔している人も少なくありません。 ほかに、感染症、薬剤などで腎臓の機能が急激に低下することもあります。タフで、滅多なことでは弱音を吐かない臓器だからこそ、日頃からちょっとした体の異変には敏感になる必要があります。少しでも異変を感じたらかかりつけ医などに相談するようにしてください。
髙取 優二 :医学博士、腎臓専門医