センバツ高校野球 山梨学院、粘った 榎谷が同点打、延長で涙 /山梨
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)は大会第3日の21日、2年ぶり5回目選出の山梨学院は木更津総合(千葉)と対戦し、接戦の末1―2で敗れた。関東勢同士の対戦は緊迫した投手戦が続いたが、タイブレークに突入した延長十三回で力尽きた。詰めかけた応援団でチームカラーの青一色に染まったアルプススタンドからは、健闘したナインに温かな拍手が送られた。【田中綾乃、平本絢子、橋本陵汰】 二回裏無死、相手の左翼への打球を渋谷が倒れ込みながらも捕球した。初回に先制された悪い流れを断ち切る好プレーに、アルプススタンドに詰めかけた生徒や保護者ら約800人の応援団からは大きなどよめきが起こった。 五回表に岩田が左前二塁打で出塁し、初めて得点圏に走者を進めると、好投を続ける榎谷が同点の適時二塁打を放つ。待ちわびていた1点にアルプスはメガホンをたたいて喜んだ。 両チームともエースの好投で、試合は延長戦に突入。「同点で追い込まれた状態を想定して練習してきた」と野球部の応援を率いていた木村光志さん(3年)も期待を込めた。スタンドからは打席に立つ選手に向け、祈るような「頼む」の声が聞こえた。 一打が出ないまま延長十二回を終えても決着がつかず、今大会2回目のタイブレークにもつれこむ。延長十三回裏、1死満塁から押し出しの四球で1点を奪われ、試合が終わった。 最後まで勝利を信じたアルプスからは思わずため息が漏れたが、一礼するナインに大きな拍手が送られた。スタンドで見守っていた榎谷の父、優史さん(45)は「皆の思いを背負ってよく投げた」と力投をたたえた。 ◇応援部隊は初舞台 ○…アルプススタンドからは、吹奏楽部と応援団がエールを届けた。吹奏楽部は、コロナ禍で現在の部員は野球部応援の経験がない。オリジナルの「Big wave」や「球心歌」などを卒業した部員らも含む48人で響かせた=写真、田中綾乃撮影。小林海斗部長(2年)は「野球部の背中を押せるような演奏を心がけ、緊張はなく楽しんでやれた」と笑顔を見せた。 応援団長は1年生女子の安藤聖奈さん。昨年12月に3年生の引退後に入団したため1人で応援を率いた。「負けたのは悲しかったが、初めて吹奏楽部と野球部と一緒に応援し、皆で一つになれてうれしかった」と振り返った。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇けが復活、2安打 山梨学院・岩田悠聖中堅手(3年) 好投手相手に仲間が苦しむ中、二塁打を含む2安打を放ち、チーム唯一の得点となるホームを踏んだ。 昨年秋の県大会で左手の靱帯(じんたい)を切るけがをして、通算打率は2割5分を切った。1年生ながら夏の甲子園での交流大会で3番を任されるなど打線の中軸を担ってきただけに、悔しさが残った。12月に手術を終えてから「甲子園に懸けて練習してきた」という努力が実り、迎えたセンバツ初戦で打撃陣の中で一番の活躍を見せた。 スタンドには少年野球チームの恩師やリハビリを担当した医師らも駆けつけた。父、大祐さん(48)は「多くの人の支えがあってここまでこれた。高みを目指して、夏も甲子園へ連れていってほしい」と目を細めた。【田中綾乃】