【空き家問題】放火、倒壊、空き巣…近隣住民は“恐々”も、所有者本人は「特に困っていない」衝撃のギャップ
それでも空き家が増え続けるワケ
では、なぜ空き家が増えてしまうのか? 大きな要因としては、以下の4つが考えられます。 (1)住宅供給過多 (2)空き家が市場に流通しない (3)所有者不明土地 (4)日本の住宅の寿命は30年しかないため? 簡単にまとめると、「空き家が売りに出されず、誰のものかわからない空き家もたくさんある一方で、新築はどんどん供給され続けている。そのため、空き家もどんどん増え続けていってしまう」といった状態が安易に想像できます。 「持続可能な社会の実現」とは大きくかけ離れた姿と言えるのではないでしょうか。 今回は、(2)空き家が市場に流通しない理由、(3)所有者不明土地の問題 について、今後の国の施策とともに深掘りしていきたいと思います。 ここでもう一度『空き家の種別割合』のグラフをご覧ください(図表2)。 驚くべきは、空き家の種別のうち、売却用の不動産の割合がわずか3.5%に留まってしまっている、という事実です。しかもこの数字には賃貸用の住宅等も含まれますから、いわゆる「一般的な空き家」の売却率はもっと低いと予測されます。 では、なぜ空き家になっても売却しないのでしょうか? 図表3は和工房(株)で行った意識調査の結果です。 なんと、空き家を放置している理由の第一位は、「特に困ることがない」という結果になっています。これは、いくつかの市区町村が行ったアンケートの結果と同じで、驚愕の事実です。 これほどまでに空き家問題が取り沙汰され、近隣住民から不安の声も上がるなか、所有者ご本人は「困っていない」。とても大きなギャップが生じているのです。 なぜ「特に困ることがない」のでしょうか? いくつかの理由が考えられますが、「近所に住んでいない」「空き家への支出の負担が少ない」。この2点が大きいのではないかと思います。 空き家をお持ちの相談者から、「年に数回、風通しや草刈りに行くと、近隣の方から『もっと頻繁に草を刈ってくれ。』『この家は今後どうするんだ?』と声をかけられます。それが嫌なんです…」といった声をお聞きします。 普段から近隣に住んでいれば、ご近所の声を無視することはなかなかできないと思いますが、遠方に住んでいるのであれば、耳にすることはほとんどありません。 また支出に関しても、家が建っていれば、住宅用地特例といって、固定資産税は1/6、都市計画税は1/3と軽減措置が適用されます。そのため、更地にするより、ボロボロでもそのままにしておいたほうがお得…となるのです。 そこで、空き家問題の解決策として、2017年に「空家対策特別措置法(空家特措法)が施行されました。これは、倒壊の危険性がある空き家や、衛生上有害である空き家を、行政の指導・命令のもと、改善もしくは除去を目的としたものです。 しかし、行政代執行までには様々な手続きを踏まないといけないことや、特定空き家とまではいかない空き家は指導・命令の対象外だったことから、2023年に一部改正され、新たに「管理不全空き家」の指定が追加されました。 管理不全空き家とは、このままではいずれ特定空き家になることが予想される空き家のことで、認定されると、前述の住宅用地特例が適用されなくなり、実質税負担が大幅に上がります。 「管理不全空き家」という区分の登場により、今まで「放置しても困らない」と思っていた空き家の所有者も、対策を迫られる可能性が出てきます。