職場復帰後の「ワーママ」に異変…大手建設会社が訴えられた「マタハラ」に周囲が“ドン引き”したワケ
マタハラの3つの判断基準
Aさんが主張する「マタハラ」は「マタニティ・ハラスメント」の略称で、妊娠・出産・育児をしていること、それらに関する制度を利用することを理由に女性労働者が職場で不利益な取り扱いや嫌がらせを受け、就業環境を害されることを指します。 男女雇用機会均等法では妊娠・出産を理由とする不利益取り扱いの禁止や、妊娠・出産、産前産後休業の利用等に関する言動により、女性労働者の就業環境が害されないようにするための措置や体制整備をすることを企業に義務付ける規定があります。 同様の規定は育児・介護休業法にも設けられており、企業は育児や介護をする労働者がそれによって不利益を被ることがないように社内環境を整える必要があります。 マタハラがどうかの判断基準は、妊娠・出産・育児休業等の事由を「契機として」不利益取扱いを行ったかどうか、という点にあります。この「契機として」という基準については厚生労働省の通達等により下記のように解されます。 (1)妊娠・出産・育児休業等を直接的な理由として不利益取り扱いがなされていること。 (2)主に妊娠・出産・育休等の事由の終了から1年以内に不利益取扱いがなされていること。 (3)妊娠・出産・育休等の事由の終了から1年を超えている場合であっても、人事異動や人事 考課、雇止めなどについては、事由の終了後の最初のタイミングまでの間に不利益取扱いがなされた場合は「契機として」 いると判断されること。 ただし、上記の場合であっても業務上の必要性から不利益取扱いをせざるを得ず、業務上の必要性が、当該不利益取扱いにより受ける影響を上回ると認められる特段の事情が存在するときや、労働者本人が同意している場合で、有利な影響が不利な影響の内容・程度を上回り事業主から適切に説明がなされる等、一般的な労働者なら同意するような合理的な理由が客観的に存在するときは法違反にならないとされています。 これに当てはめると、Aさんは時短勤務で復帰していますが、これは本人が望んだことであり、不利益扱いには当たりません。 また、問題となっている社内選考でのプロセスについても、時短勤務であることは問題とされておらず、日頃の業務に対する評価、選考にあたり提出を求めたレポートの精度などと総合的に勘案して行われたものであり、マタハラには該当しません。 Aさんはこの説明に不服があるようでしたが、選考を勝ち抜いた社員の名前が公表されると納得せざるを得ませんでした。 その社員は誰もが認める努力家で、周囲からも信頼厚い存在だっただけではなく、子どもを育てながらも仕事に穴をあけたことがない女性だったからです。