12人出産した与謝野晶子が伝える、子どもの人格を豊かに発展させる方法「教育を学校と家庭だけに限定して考えるのはまちがっている」
今年1月からNHKで放送中の大河ドラマ『光る君へ』。主人公は平安時代のベストセラー『源氏物語』を書いた紫式部。そんな彼女と同じように、近代の女流歌人として活躍し、『源氏物語』の翻訳を3度試みた与謝野晶子。今回は与謝野晶子が書いた評論集の中から、選りすぐりの言葉や詩を紹介します。与謝野さんいわく、「どんなによい家庭であっても子どもにとっては単調に思える」そうで――。 【書影】今こそ読みたい、与謝野晶子の美しく力強い言葉の数々『与謝野晶子 愛と理性の言葉』 * * * * * * * ◆思春期は無理に押さえつけない 男の子も女の子も、中等教育を受けるようになれば、もうすでに一人前になりつつあります。 どんなによい家庭であっても、赤ん坊のころから慣れている環境ですから、子どもにとっては単調に思えるでしょう。 その反対に、家庭以外で見聞することは、ことごとく新発見の刺激と驚きをもたらすものです。 自分の家の手の込んだ料理よりも、よその家や宿泊施設の粗食のほうを珍しがったりもします。 父母きょうだいの話よりも、友人の意見のほうが新鮮味や魅力に富むものです。 巣立とうとする鳥を、無理に押さえつけてはなりません。
◆一生の力 教育を、学校と家庭だけに限定して考えるのもまちがっています。 教科書以外の本から、また家庭以外の友人から多くのことを教えられる、ということを十分に心得ていなければなりません。 よい友人をもつことによって得られるよい影響は、一生の力になります。 異性との交際も、ものごとのわかった父母は、目立たぬように警戒しつつ許容するのがいいでしょう。 「子女の家庭的保護」(『横濱貿易新報』一九二三年四月二三日)
◆新しい世界に向かっていきなさい いとしき、いとしき我子等よ、 世に生れしは禍(わざはひ)か、 誰か之を「否(いな)」と云はん。 されど、また君達は知れかし、 之がために、我等――親も、子も―― 一切の因襲を超えて、 自由と愛に生き得ることを、 みづからの力に由りて、 新らしき世界を始め得ることを。 *「我子等よ」(『晶子詩篇全集』より) 「いとしい、いとしい、わが子たちよ、/この世に生まれたのは禍だったのでしょうか/「違う」と誰が言えるでしょう。/けれども、あなたたちに知ってほしい/だからこそ、私たち――親も、子も――/すべての古い不合理なしきたりを越えて、/自由と愛に生きられることを、/自分たちの力によって、/新しい世界を始められることを。」