アメリカが核の傘で日本を守れない本当の理由 日米関係者はことを荒立てないため黙認している
つまり、アメリカは、日本が核攻撃を受けても、あえてそれに反撃しないのだ。これが、日米安保の「核の傘の破れ」でなくて、なんであろうか。 念のために言っておけば、北朝鮮も、北朝鮮が核攻撃によってひどいことになる(f)のはいやだろう。けれども北朝鮮は、国民の権利と安全に責任をもつ民主主義の政権ではさらさらなく、国民のことなど実はどうでもよいと思っている権威主義的な独裁政権である。 北朝鮮の存在しない世界など、存在しなくてよいと思っているとも言う。北朝鮮が壊滅する(f)かもしれないとしても、アメリカを核攻撃する(e)だろう。
だから、アメリカは北朝鮮を核攻撃する(d)ことはできない。日本が核攻撃を受ける(c)としても、それを黙ってみているしかない。 ■なぜ日米安保は機能しないのか このように、北朝鮮の核の脅威の前に、日米安保条約は機能しない。なぜか。それは、日米安保条約が、アメリカ本土に核攻撃が及ばないという前提で、結ばれているからである。この前提が崩れた。よって、日米安保は機能しなくなるのである。 いや、ちょっと待って。米ソの冷戦の時代には、ソ連の核兵器はアメリカ本土に到達する可能性があったではないか。それでも日米安保は機能していたではないか。なぜ北朝鮮が核保有国となった場合に限って、日米安保が機能しなくなるのか。
比較のためにまず、テロリスト集団が核兵器を手にしてしまったケースを考えよう。 テロリスト集団は、武装した組織で、政治目的をもっている。そして、通常の武器のほかに、核兵器を手に入れた。アメリカの市民を人質にとったり、アメリカの大使館を占拠したりして、アメリカに政治的要求をつきつける。 「刑務所に閉じ込められている仲間を解放しろ。何百万ドルの身代金を払え。われわれのこれこれの要求を聞け。さもなければ、ワシントンDCに核兵器をぶちこむぞ」
各国の政府は、テロリストとは交渉(取引)をしないのが原則である。交渉する代わりに、拠点を急襲し、テロリスト集団を無力化し、身柄を押さえるなり排除するなりすることをまず目指すべきだ。 人質を取られている場合は、慎重に対応しなければならない。場合によっては、人質の解放を優先して、取引に応じる可能性もないとは言えない。 テロリスト集団が核兵器をもっている場合は、自国の国民が人質に取られているのと同じである。彼らの要求をはなから無視するわけにはいかない。核兵器が交渉力(政治力)に転化してしまうということである。