経済発展の影にデザインあり 戦後西ドイツのグラフィックデザイン展 西宮市大谷記念美術館
戦後、東西分断を経て、1990年に統一されたドイツ。統一前の1950年代末、西ドイツのGNPは世界第2位に躍進し「経済の奇跡」と呼ばれたが、その背景にはドイツ特有のデザインシステムが関わっていたと考えられている。戦後の西ドイツのポスターや関連資料などからグラフィック表現の魅力に迫る「戦後西ドイツのグラフィックデザイン展」が、西宮市大谷記念美術館で開かれている。2025年2月24日(月・祝)まで。 【写真】「戦後西ドイツのデザイン展」をのぞき見! 「とにかくカッコイイです」と話すのは、西宮市大谷記念美術館の下村朝香学芸員。デュッセルドルフ在住のグラフィックデザイナーであり、グラフィックデザイン研究者・大学教授であるイェンス・ミュラー氏による「A5 コレクション・デュッセルドルフ」のポスターやグラフィック関係の小品など約380点が会場に並ぶ。同氏は、自身がデザイナーとして活動する中で、過去の資料を集めるようになったといい、それがコレクションに繋がった。今展では幾何学的抽象、イラストレーション、写真、タイポグラフィーというデザインの構成要素からその魅力を紹介する。 ドイツというとバウハウス(1919~1933)を思い浮かべる人も多い。戦前のドイツにおけるモダンデザインの源流とも言われ、その思想を世界に示した教育機関だ。戦後の西ドイツでは、1953年にウルム造形大学が開設され、その理念を継承した。ドイツでは古くから特有のデザインシステムが構築されており、世界で最も古い歴史を持つセーリング・フェスティバル「キールウィーク」や1972年のミュンヘンオリンピック、中部の街・カッセルで5年に1度開催される現代美術展「ドクメンタ」など、国際的なイベントでもグラフィックデザインは大きな役割を果たした。 第二次大戦後、アメリカのデザインがもてはやされるようになるが、ドイツではモダニズムの思想を受け継ぎながらデザインと科学・哲学・社会思想などとの接点を探り、デザインの理論を発展させ、実践する。ドイツならではの表現を生み出しており、展示されている映画ポスターなどは、独自にデザインされたものも多い。日本映画のポスターもある。「日本人から見ると、イメージが違うかもしれない」が、その作品をしっかりと表現している。 下村学芸員は「もう、西ドイツという国は存在しません。印刷技術が進んで、図録などでその作品を見ることはできるが、そのままのサイズではない。展示しているのは『その当時、その時代』に作られたもの。大きさや迫力など実物だからこそ感じることができる。またドイツ語がわからなくても、理解できるよう、デザイナーが『伝えたいこと』をうまく落とし込んでいて、その力を感じる。面白いです」と話す。 今展は同館の後、東京へも巡回するが、「西宮の方が展示作品は多いです(笑)」(下村学芸員)。 ■戦後 西ドイツのグラフィックデザイン展 2024年10月26日(土)~2025年2月24日(月・祝) 西宮市大谷記念美術館 (西宮市中浜町4-38) 休館日 水曜日、年末年始(2024年12月23日(月)~2025年1月3日(金))
ラジオ関西