初日は転売ヤー殺到で「異様な雰囲気」に…「ハローキティ展」の展示内容に覚えた「物足りなさ」の正体
50周年にしてはいささか物足りない
会場で販売されている図録(¥4,400!)で「ハローキティとは何か」という議題(?)についての説明は、ある程度なされているが、全員が図録を買うわけではない。もっと言えば、図録の解説もそれほど詳しくはない。「ハローキティとは何か」について考えたいなら、『なぜ世界中が、ハローキティを愛するのか?―”カワイイ”を世界共通語にしたキャラクター』(クリスチャン・ヤノ/作品社/2017)といった翻訳書を読むことをおすすめしたい。ところで余談だが、海外の著者たちの論考を超える日本人によるハローキティ本がないのは、なぜだろうか。できれば日本の研究者による、ハローキティのバイブルが書かれると良いのだが……。 展覧会の図録は紙質も良く、とてもかわいらしいファン必携の一冊に仕上がっている。こうして、イチャモンをつけている私自身も、大事にページをめくって読んだ。それでも、50周年という大きな節目のハローキティ本として評価するならば、いささか物足りないと私は感じた、という話である。 展覧会としての深みでいえば、2021年4月に名古屋の松坂屋美術館でスタートした「サンリオ展 ニッポンのカワイイ文化60年史」のほうが見ごたえがあったように思う。ハローキティ単体ではなく、サンリオの歴史を振り返る内容だが、非常に興味深い内容だった。全国を巡回しており、今後もまだどこかで開催されるので、お住まいの近くでやっていたら、ぜひ足を運んでいただきたいと思う。
現在は混乱なく開催
今回の「Hello Kitty展 -わたしが変わるとキティも変わる」開催前に『ウェブ版美術手帖』編集長の橋爪勇介さんがSNSにて、「東博も必死で稼がねばならないのだ、という状況が読み取れる展覧会。」とネガティブな空気感でもってコメントしていた。「ハローキティは日本が誇るアイコンであり、表慶館はカルティエのようなブランドも展覧会を開催する場所だ。何が悪いのだ、まさかハローキティは高尚なアートではなく下賤な商売とでもいうのか」と少々憤りを覚えたが、初日の大混乱の最中にいた一人として、橋爪さんの感じたであろうイラつきを今は共有している。 サンリオのオペレーションや見立てが甘かったのは事実だろう。やはり、東博でやるからには、もっと緻密に十分な準備をしておくべきだった。昨今、各「推し活界隈」で問題になっている「転売ヤー」が出現するのは予想されたし、列の並び方にしても、どういうシミュレーションをしていたのか、と首をかしげる混乱だった。 ただし、初日の惨状の反省から、トライ&エラーを重ねた改善により、今は混乱なく開催されている。展覧会終了はまだまだ先だ。これから訪れる方は(グッズの欠落はあるかもしれないが)、随時更新される公式SNSで様子を見ながら、安心して行ってほしい。私も再訪する予定だ。 #3【最近の「ハローキティ」に覚えた違和感…口が描かれていないのに「よく喋る」のはなぜなのか】を読む。
中沢 明子(ライター)