初日は転売ヤー殺到で「異様な雰囲気」に…「ハローキティ展」の展示内容に覚えた「物足りなさ」の正体
展示はゆっくり、じっくり
私は嫌な予感がした。「もしかして、グッズ売り場だけが混んでいるのではないか」という危惧である。 やっとこさ会場に入ると、過去の懐かしいハローキティ商品がたくさん展示されている肝心の展示場はガラガラ。喧噪の待ち時間を考えると嘘のように、ゆっくり、じっくり見物できた。自撮りも楽々。そしてグッズ売り場に向かうと、またもや会場の外に出されて90分も待たされた。むろん、例の目玉品の会場限定マスコットは完売だった。 朝の光に照らされていた会場入り口のハローキティが、帰り道ではライトアップされていた。正直言って、とても疲れたし、ハローキティの50年間を心からお祝いしたいと、スケジュールをやりくりして初日に足を運んだコアなファンたちが(自分も含めて)かわいそうだと思った。
相次ぐメディアの報道
翌日、サンリオは公式サイトにて「ハローキティ展 開催初日の混雑に関するお詫び、一部商品の受注販売について」というメッセージを掲載した。 これ以降、テレビやウェブメディアなどが、「かわいいキティちゃんの展覧会が大混乱!」といったように、こぞって面白おかしく報道した。これから来る人たちの参考にと思って現場の様子をSNSで発信した私のもとにも、複数のメディアから「その写真や動画を貸してください」と連絡があった。コタツ記事で面白おかしく報道されることがわかりきっている相手に無償で貸すほど、私はお人よしではない。そんなふうに乱暴にハローキティを消費されたくない。すべてお断りである。 ただし、オペレーションの不備に加えて、肝心の展示自体についても「懐かしい商品がいっぱい陳列されていて、ファンだからとっても楽しいが、東博でやるほどの展示か、といえば、そうでもない。ハローキティに思い入れがない人が観ても、ふーん、以上以下でもないだろうな」という感想を私は持った。
解説の内容は……
年代別に紹介されている過去の商品の数々が圧巻なのは確かだが、「ただかわいく並べただけ」と言っても差し支えない展示方法のうえ、解説の内容が薄い。 たとえば今から15年前の35周年グッズコーナーには「35周年として昔のデザインを現代風にアレンジしたメモリアルシリーズ。人気のお座りポーズをポップにアレンジして更にかわいさアップ!」というポップがついていた。なんというか、見たまんまだ。 「昔のデザインを現代風にアレンジ」というコンセプトは、おそらく周年ごとに繰り返される手法である。だから、15年前の「現代風」とは2024年の今とどう違うのか、時代背景や当時のデザインチームの工夫について、もう少し詳しい解説が加えられていたら、ハローキティというキャラクターが社会の変化とともに歩んできた歴史を、もっともっと深く理解する手助けとなっただろう。「読ませる」のではなく「見せる」を重視した展示方法であったとしても、もう少し丁寧な解説が欲しかった。 「見せる」に主軸を置いた展示でも、「あの頃」のハローキティに時代の気分が反映されていたことを、リアルタイムで見ていた私(たち)には理解できるし、過去への郷愁にも誘われる。だが、若者、インバウンドの観客、なんとなく観に来た人からすれば、おそらく全部がフラットな「かわいいキティちゃん」なのだ。