「絶対にやりなさいとは言わない」食事制限、体重管理もナシ…大学の指導者に転身した体操・寺本明日香（28歳）の今「すごく癒されるんです」
打ち明けた“体操への拒否反応”「熱が出てしまう感じで…」
戻ってきた、とは何を表しているのか。寺本は続ける。 「引退してから半年ぐらいは体育館にも一切行かなかったし、体操の試合を見たらほんとうに熱が出てしまうような感じだったんですよ。4月に行われた全日本選手権の前も胃が痛くて何も食べられなかったり。オリンピックに行けるか行けないかのレベルの子たちを見るのが、今はまだ私にとってはしんどくて、自身の心が追いついていないです」 その中でも、少しずつ気持ちに変化があった。その契機となったのは、至学館大学で教えている日々だ。 「ずっと体操に拒否反応がありましたけど、この子たちを見ているからすごく楽しいって思えるんです。楽しそうに体操をやっているし、失敗してもそこまで落ち込まずに、悔しいからまた練習する、という感じで。私は失敗したら人生が終わるような感覚でやっていたから、そうじゃない子たちを見ているとすごく癒されるんですね。『体操ってこうでいいんだ』みたいな。失敗してもいいし、自分が納得いくレベルでできていれば全然OKで。だから体操ってこんなに楽な気持ちで見られるんだ、という環境が私にとって今は居心地がいいんです」
寺本明日香が見据える、今後の夢
癒されていく中で、今もしんどくても、行動は変わった。 「引退して2年経ちますけど、だいぶ体操を見ることも大丈夫になってきて、ぜひぜひ体操を見に来てくださいって言えるようになって。違う競技の子とかお世話になっている方に『全日本選手権、NHK杯があるのでぜひ観に来て下さい』と誘えるようになったのがようやく今年からです。 まだ目標が完全には定まっていなくて。引退会見のときに『(代表チームのサポートができるようになるのは)たぶん10年後』って言いましたけれど、まだまだ2年、生まれたての小鹿みたいなものなので。『寺本明日香カップ』は周囲の反響も大きかったので続けていこうかなと思っているのと、その中でいろいろな方とお話しする機会が増えたので、そういった人たちのアドバイスや知識をいかして何かやっていけたらいいなと思っています」《インタビュー前編も公開中です》 (撮影=細田忠)
（「オリンピックへの道」松原孝臣 = 文）
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