「絶対にやりなさいとは言わない」食事制限、体重管理もナシ…大学の指導者に転身した体操・寺本明日香(28歳)の今「すごく癒されるんです」
日本体操女子の主軸として約10年にわたり活躍し、2022年に現役を引退した寺本明日香(28歳)。現在は至学館大学で体操競技部の女子監督として活動する寺本を訪ねた。《NumberWebインタビュー全2回の後編》 【写真】身長142センチ、かつて「天才少女」と呼ばれた寺本明日香さんの現在(28歳)の姿。現役最後の演技に、流した涙。オリンピックでの活躍写真も。この記事の写真を見る。 ◆◆◆ 2022年4月の全日本選手権をもって引退した寺本明日香。同年9月、至学館大学体操競技部の女子監督に就任、昨年4月には体育科学科の助教にもなった。 「引退のときは、これから自分が何をやりたいのか基本的には決まっていませんでした」 その後、色々思案や行動した結果として現状となる形に。 「何も分からないのにいきなり社長に就任したみたいな感じです(笑)。選手としてはキャリアがあったかもしれないけれど指導歴はゼロ。強豪校に行って何を指導できるのかと思ったし、トップではない違う世界も見てみたい、いい勉強になると思いました」
体操は部活。勉強も大事だし、バイトもある
スケジュールや練習メニューを管理し、試行錯誤しながら指導にあたってきた。 至学館大学の体操競技部は、寺本の言葉にあるように決して強豪というわけではない。寺本が築いてきたキャリアと大きく異なる。 「私はもう体操に人生を捧げていたんですけど、ここの子たちは違います。体操は部活で勉強も大事だしバイトもある。ギャップがあったし、最初の方はけっこう強く言っていた部分がありましたが、今では強く指摘しすぎるとよくないと思うようになりました。 適度な距離感とその子に合った声かけが大事で、こういうときはこういう声かけをした方がいいという絶対的なものはないんだな、ということも感じました。同じ言葉かけをしても、いい方向に行くことも悪い方向に行くこともある。その子の受け止め方は性格によるから、空気感とかその子の表情とか、心理的な要素をちゃんと見ないと指導はできないですね」
体重も食事も「全く管理してないです」
指導のスタンスは、無理して引っ張り上げるのではなく、どこまでやりたいのか、成長したいのか選手自身のモチベーションを大切にし、目標達成のためのアプローチを考える。体操ではよくある食事制限や体重管理についてもこう語る。 「してないですね。体重も全く管理してないです。1カ月に1回インボディ(体成分分析)を使って結果は見ますけど、何も言わないです。ただ、『もしこの技がやりたかったら、ここら辺まで絞らないと危ない』ということは伝えます。その先は彼女たち次第、絶対的にやりなさいとは言わないです」 自らの意志で食事管理をしていた現役時代が示すように、自発的に取り組む寺本のスタンスも反映されているのかもしれない。現役時代の経験は次の話にも生かされている。 「自分の失敗例が生きた話で言うと、私は無理してやるタイプで、痛いところがあったとしても気にせず練習してひどくなることがありました。ここの子たちには、ちょっとでも違和感があったり痛かったらすぐストップさせるようにしています」
【関連記事】
- 【写真】身長142センチ、かつて「天才少女」と呼ばれた寺本明日香さんの現在(28歳)の姿。現役最後の演技に、流した涙。オリンピックでの活躍写真も。この記事の写真を見る。
- 【インタビュー前編から読む】「コンビニでお菓子を凝視し、食べた気に…」引退から2年、寺本明日香が明かす“食事制限に苦しんだ現役時代”「気合と根性で乗り切っていた」
- 【人気】「下着が出る心配も違和感もない」新レオタードを考案した杉原愛子に、保護者から届いた切実な感謝「娘のレオタード着用に抵抗がありましたが…」
- 【気になる】「あのユニフォーム、今どうなった?」国内大会で着用者なし…性的画像被害を防ぐ“ユニタード”が体操界で普及していない「3つの理由」
- 【必読】平岩優奈は24歳で…女子体操選手の“引退”はなぜ早い? 体重制限で“燃え尽きる”リスクも…指導者の意見「こういう競技なので軽やかな方が」