「絶対にやりなさいとは言わない」食事制限、体重管理もナシ…大学の指導者に転身した体操・寺本明日香(28歳)の今「すごく癒されるんです」
指導をする中で感じた“体操界のある問題”
自身の競技人生とは異なるところにいる選手たちを指導しているうちに、感じたことがある。 「やったことのない技がけっこうある子たちも多いです。『私なんかできません』という子もいる。でもとりあえずやらせてみるんです。そこから『できそうじゃん』となって変えた技とか変えた構成もあるので、伸びしろがいっぱいあるのは見ていて楽しいです」 伸びしろがある、と感じられる選手たちを教える中で、ある問題に気がついた。出場できる大会の少なさだった。 「私のときは、例えば全日本選手権、NHK杯、全日本種目別選手権、全日本団体選手権、国体……といっぱい試合がありました。色々指導して調べたり聞いていくと、少ない子だと年に3回くらいしか出られる試合がないんですよ」 練習してきた成果を披露する機会が少ない――だったらその場を作ろう。そして立ち上げた「寺本明日香カップ」は、3月26、27日に愛知県・パークアリーナ小牧で開催された。「ジュニア」から「エリート」まで4つのカテゴリーの試合には多くのチームと選手が参加。人数は計95名を数えた。期間中には体操の体験会、エキシビションも実施した。
「結局は体操に戻ってきたんですよね」
「選手のための強化の部分と、一般の方向けの普及活動の両方をやろうと思いました。体操体験会に来た子どもたちが大会を見てすごいって思うんじゃないかな、体操を見る機会が増えるきっかけになるんじゃないかな、と思っていろいろ詰め込みました。やってみてすごくよかったし、次回はどうするかとか考えています」 大会のプログラムに体験会を加えたことが示すように、普及への意識も強い。 「私が今自分で動いてできるのって、体操に少しでも興味のある子どもたち、親御さんたちを増やすことだと思うんですね。1回やったからっていきなり増えるわけじゃないので、しっかり継続するのと、似たような大会を他でもやっているところがあるので、そういったところと協力もしたい。また、例えば村上茉愛は茉愛のフィールドで、杉原(愛子)は今は現役に戻っているけれど、動画配信などをやっていると聞いたので、それぞれがそれぞれの分野で活躍することで体操が広がっていくと思います」 指導者の立場になり、普及など体操界に貢献する。それらの活動の事実だけをとれば、引退したあとも体操の世界で生きているように思える。 でも寺本は言う。 「結局は体操に戻ってきたんですよね」
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