レアルを本気にさせた鹿島アントラーズの敗戦価値は
前線から果敢にプレッシャーをかけ続け、ときには体を張ってゴールを守る。そのうえでチャンスの匂いを嗅ぎ取るや人数をかけて攻める、という十八番のスタイルが、特に同点とされてからは繰り出せなくなったと永木も振り返る。 「守備の時間がかなり長くて、そこで体力をもっていかれた部分もあると思う。少しでも隙を見せるとバイタルエリアを上手く崩されるし、速さもあるので、神経を集中させていた分だけ疲労もたまって、前へ行く力が少し足りなくなったのかなと。カウンターの精度も落ちたし、延長戦に入ったことは自分たちにとってはマイナスだったと思います」 欧州の強豪クラブと公式戦の舞台で真剣勝負を繰り広げたのは、鹿島が初めてとなる。2008年のクラブワールドカップ準決勝で、ガンバ大阪がマンチェスター・ユナイテッドと3‐5の点取り合戦を演じたが、展開としては1‐5と大勢が決してからガンバが2点を返していた。 文字通りの“未知との遭遇”は11日間で4試合目となる鹿島の体力と気力を削ぎ取り、延長戦に入るとガス欠を引き起こさせた。それでも、白旗を上げるような惨敗ではなく、むしろ日本のクラブとして進むべき道が鮮明に見えたと昌子は未来を見すえる。 「チーム力という部分で、やはりワールドワイドになっていかないと」 強烈な個に対抗しうるのは、一致団結した揺るぎない組織。利き足とは逆の右足によるシュートは外れてしまったが、組織力で上回った後半終了直前には、MF遠藤康があわや決勝ゴールというビッグチャンスを迎えてスタジアムを総立ちにさせた。 7万人近い大観衆の目の前で一敗地にまみれた眠れぬ夜も、鹿島が開催国代表ではなくアジアの王者として再びクラブワールドカップの舞台に立ち、世界の強豪へ雪辱を果たす糧になるととらえれば価値ある黒星となる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)