ESA、宇宙探査の長期戦略「Explore 2040」を明かす–月探査と火星探査を目指す
欧州宇宙機関(ESA)は宇宙探査の長期戦略「Explore 2040」として、宇宙飛行士による月探査と火星探査を目指すことを明らかにした。 イタリア・ミラノで開催された75回目となる国際宇宙会議「International Astronautical Congress(IAC) 2024」で10月16日にESAで有人探査・ロボット探査担当ディレクターを務めるDaniel Neuenschwander氏が登壇。海外メディアのSpace.comによると、講演で同氏は「我々は加盟国と『Explore 2040』と呼ばれるプロセスを進めている」「我々は、ヨーロッパ人を月周回と月着陸ミッションに導きたい。その先の目標は人類を火星に送ることだ」と語った。 月探査に関しては、ESAは米航空宇宙局(NASA)の「Orion」(オリオン)宇宙船の一部としてサービスモジュールを提供している。月への着陸能力では、ESAはAirbus(エアバス)と共同で月着陸計画「Argonaut」を開発している。 Argonautは、月に科学観測機器などの貨物(ペイロード)を複数回届けることを目標としている。着陸機(ランダー)には、将来の宇宙飛行士のための食糧や水を含め、最大2100kgのペイロードを搭載可能と説明。月面のあらゆる場所に100m以内の精度で着陸できるという。 Argonautでは、月を周回する5機の衛星で構成されるコンステレーションである「Moonlight」を活用する。5機のうち4機が航法(ナビゲーション)用、1機が高速通信用。地球と月との間における高速通信とデータ転送を実現し、正確で自律的な宇宙船の着陸と移動が可能になるという。3つの専用地上局が送受信する。 火星探査に向けて、ESAは電気推進の力で航行するタグボート「LightShip」計画を進めている。LightShipは、人間とペイロードを火星まで運ぶことを想定している。旅客船であり貨物船でもあるLightShipは、火星の周囲に通信とナビゲーションの機能を提供するため、火星と地球の間の通信を中継する役割を果たすことも念頭に置かれている。 ESAによるExplore 2040はまだ確定していない。2028年に開催される理事会では、月探査と試料採集(サンプルリターン)、月面の遠隔キャンプ、有人月周回拠点「Gateway」からの貨物船の帰還、Argonautの進化の可能性などが検討されるという。
塚本直樹