レクサスLM 詳細データテスト 後席は快適至極 不足気味のパワートレインとシャシー 静粛性に盲点
はじめに
長らくわれわれがトラディッショナルなプレミアムブランドのラインナップと見なすものを送り出し続けてきたレクサスが、新たな動きを見せた。 【写真】写真で見るレクサスLMとライバル (17枚) モデルの多様化、というのはマーケッターがよく口にするセリフだが、すでにSUVはフルラインナップと言える陣容で、しかも本流のサルーンを切り捨てようという動きもない。UXやNXといった売れ筋、はたまたEV専用車のRZまで投入した今、欧州プレミアム勢とはストレート一本勝負ではなく、ときには意表をつく変化球も必要だという考えには、大いに賛同できるところだ。 少量販売・多利益モデルは今後、より大胆な動きを見せるだろう。今回のテスト案件が欧州市場に上陸したということは、それを如実に語っている。ラグジュアリー・ムーバーことLMはフルサイズの高級MPVで、自家充電式ハイブリッドを搭載。欧州でも非常にニッチな、VIP向けシャトルという市場に挑む。 リムジンの。もちろん後席での長距離移動に慣れたような御仁なら、気になるところだろう。果たしてこれが、古き佳きリムジンに代わるものとなり得るのか、そして、プライベートジェットでの移動にどこまで近づけるのか、と。 もっとも、日欧では初お目見えの新型車とはいえ、これが2代目であることはご存知だろう。この高級MPVの初代は2020年、中国や東南アジアで発売されている。いうまでもなく、先代トヨタ・アルファードの上級コンバート仕様だ。 しかしながら、聞く限りは単なるバッジエンジニアリング以上のものがあるという。ただクローム装飾をゴテゴテ施しただけのバンを想像したら、そういうものではないようだ。レクサスが提案する究極のラグジュアリーとはいかなるものか探っていこう。
意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆
メルセデス・ベンツVクラスやフォルクスワーゲン・トランスポーターなどバン系モデルをベースに、アフターマーケットで高級乗用車にコンバートされたものは目新しくない。ところが、メーカー自身がそれを企画・製造するというのは斬新だ。 ベースとなるTNGA-Kは商用車用ではなく、レクサスではNXやRXにも用いられる、トヨタのFF乗用車用プラットフォームだ。無論、それぞれのクルマに応じて設計が最適化されるのは、LMにも言えることだ。 結果として生まれたのは、全長5m超、全高2m近い、バン風のフォルムを持ったクルマだ。室内空間を最大化するため、できるだけキャビンフォワードに設計されている。 こうして生まれた、そびえ立つようなレクサスの新型車は、価格もまたフラッグシップサルーンのLSに匹敵する高みにある。背の高さはまったく異なるこの2台、LMのオーナーがスタイリッシュでソソるルックスを欲することはないはずだ。実際、これでレクサスに文句を言うのは、高級車はローフォルムを保つべきだと積極的に考えるひとびとくらいだろう。しかも、そういう主張は、すでに高級SUV全盛の現代ではすでに主流ではない。 シャシーの素材はおおむね高張力スティールだが、巨大なサイドドアはフロントのスイング式もリアの電動スライド式もアルミ。モノコックはレーザースクリューウェルデッド工法に、剛性向上と制振に効果を発揮する構造用用接着剤と、適材適所のブレース追加が加えられている。 パネルギャップは縮小され、これにより風切り音の低減も図られた。エンジンルームやホイールハウス、ダッシュボード裏側の遮音や振動対策も入念に行われている。ボンネット上部とAピラーも風切り音低減に配慮したデザインで、さらに全周にわたって遮音ガラスを用いる念の入れようだ。 サスペンションは四輪独立で、フロントがストラット、リアがダブルウィッシュボーン。スプリングはコイルで、エアサスの設定はない。ただし、ダンパーはAVSことソレノイドを用いたアクティブ可変ダンパーを装着し、ピッチやロール、波打ちに対応する。このほか、レクサス初採用となる周波数選択式バルブを備えたパッシブダンパーも設定される。 英国仕様はガソリンハイブリッドの350hのみ。2.5Lの4気筒に駆動用モーターを組み合わせたFF車と、リアにもモーターを積んだ、前後駆動系に機械的な連結のない電気式4WDが用意される。テスト車は4WDだ。