【インターハイ2024】東山が悲願の全国初制覇、大会のスター選手として輝きを放った瀬川琉久「いろんな感情が涙になりました」
「今まで悔しい思いをしてきた甲斐がありました」
福岡インターハイは準決勝で福岡県の『ホームチーム』3つが脱落し、決勝は男女ともに京都府と岐阜県の対戦となった。連日スタンドを満員に埋めた観客が大声援を送った福岡勢がいなくなったことで会場は寂しい雰囲気になるかと思いきや、8月9日のスタンドには熱心なファンが駆け付けた。 バスケをやっているであろう小さな子供たちも多数いたが、その様子を見ていて気付いたのは、彼らの視線が瀬川琉久を追っていることだ。瀬川がドライブで加速すると、子供たちは前のめりになり、得点を決めると隣の友達と肩を寄せ合って喜ぶ。スタンドのあちこちから『瀬川!』という小さな声が漏れ聞こえてくる。 美濃加茂を78-62で破った決勝の終盤には瀬川のフリースローがいくつかあったのだが、フリースローラインで何度かドリブルをつき、ゴールを見つめる瀬川の動きに合わせて、坊主頭の小さな子供が呼吸を沈める。優勝を決めるブザーが鳴った瞬間、瀬川は持っていたボールを高く高く投げ上げた。それに合わせて、子供たちは大きく万歳をした。 福岡第一との準決勝では徹底マークに苦しめられた瀬川だが、その分まで決勝では攻め気を全開にしてプレーした。試合の立ち上がりから強引なアタックを仕掛け、それでもフィニッシュの時には手先まで気を配るフォームで高確率のシュートを決めていく。瀬川がダブルクラッチを沈めると、スタンドは大いに沸いた。 その瀬川は、表彰式でトロフィーを手にはしゃいでいた。東山にとっては初の全国制覇。彼にとっても高校生になって初のタイトル獲得。中学からタイトルを取ってきていた彼は、無冠であることをひどく気に病んでいた。 「1年生の頃はチームが崩壊して、何の記憶もないぐらい落ち込みました。新チームになってみんな一丸でやったんですけど去年は日本一になれず、悔しかったし我慢の1年でした」と振り返る瀬川は、今大会についても「準決勝まで自分たちのやりたいプレーができず、得点もなかなか取れずに終わってしまいました」と語る。 それでも「決勝はそれを覆すように全員で得点を取って勝ち切れた。しっかり終われて良かった」と話す。 優勝が決まった瞬間には涙もこぼれた。「今まで悔しい思いをしてきた甲斐がありました。目標が達成できてホッとした気持ちも。いろんな感情が涙になりました」と瀬川は言う。「中学まであまり負けを経験してこなくて、それはもちろんうれしいのですが、順調に行きすぎた部分もありました。高校に入って上手くいかない時期が2年続いて、その思いがやっと報われたのがうれしいです」 瀬川の勝利への飢えはまだ満たされていない。「あと2冠、しっかり勝ち切って本当の日本一になりたいです」