温室効果ガスを75%削減? アルミのクリーン製錬所がアメリカに誕生へ
工場新設にかかる費用
新工場については詳細不明点がたくさんあるものの、1つ明確なことがあります。それは、工場建設には莫大なコストがかかるということ。業界脱炭素に注力する非営利団体Industrious Labsのアルミニウム担当Annie Sartor氏いわく、エネルギー省からの資金はすべて使い切るどころか、きっとそれ以上の費用がかかるだろうと。「大規模でモダンな工場新設は、(エネルギー省予算の)倍はかかるのではないでしょうか」 エネルギーコンサルタントのWood Mackenzie氏いわく、中国以外のアルミ精錬所では、年間生産100万トンにつき40億ドルのコストがかかると言われています。 莫大な建設費用はもちろん、その工場が必要とするクリーンエネルギーはどっからもってくるの?という問題もあります。エネルギー省によれば、センチュリー・アルミニウムはケンタッキー州に工場建設を希望しているそうですが、実はケンタッキー州はクリーンエネルギーに強い州ではないのです(2020年の太陽光発電力はたったの30.1メガワット、風力発電なし)。 Sartor氏は、工場に電力を供給するには、80万世帯の年間電力に匹敵する電力量が必要だといいます。つまり、ケンタッキーにクリーンなアルミ精錬所を作るとすれば、まずこの莫大な量のクリーンエネルギーを作れる施設から作らなければならないと。 センチュリー・アルミニウム担当者は「変革プロジェクトの前進にわくわくしている」と取材にコメントはしてくれたものの、必要なクリーン電力をどう確保するのかなど詳細についてはノーコメント。米エネルギー省も同じく詳細については触れていません。
誘致バトル勃発?
いずれにせよ、実現すれば45年ぶりとなるアルミ精錬所の建設地はまだ公には決定していません。センチュリー・アルミニウムが推すケンタッキー州なのか、はたまたほかで噂されているオハイオ州なのか。 誘致には政治な力も働くのは必至。なんせ、センチュリー・アルミニウムの予想では、精錬所誘致によって1,000を超える組合系の求人、5,500を超える建築求人が発生するとのこと。 Dell氏は、この求人はケンタッキー州などにとって経済発展のチャンスとして非常に魅力的だといいます。また、建設候補地域はクリーンエネルギー最先端エリアとは言い難いだけに、この誘致をきっかけに環境問題への取り組みがアップすることも期待されているでしょう。
製鉄業界への刺激
センチュリー・アルミニウムが国からの予算を獲得し計画を実行できたら、つまりクリーンなアルミ精錬所を実現する術を見つけることができたら、製鉄などほかの産業にも大きな影響があります。他産業にも変革の希望、チャンスがあるということ。同時に、クリーン化しないと負けるというプレッシャーにもなります。 鉄はアルミの最大のライバル。クリーンという高い付加価値を自社の金属につけることができれば、自動車業界へのアピール力も高まります。アルミ精錬のクリーン化成功は、つまり、製鉄のクリーン化の起爆剤となるかもしれないのです。
そうこ