マー君が求めた捕手技術「フレーミング」の誤解…日本は先進国だった?!
里崎氏の説明によると、フレーミングとはしっかりとした技術指導のできるチームでは、小学校から学ぶキャッチングの基本技術。左右、上下、どこのコースも常に捕球する瞬間にミットは外から内に使い、捕球と同時にミットをピタっと止める。特に低めのボールに対してミットが流れることを「垂れるな」と注意しておく。捕球してからミットは「動かすべからず」である。ボールゾーンで捕球したボールをストライクゾーンに動かすのは、「ずらし」であり、正しいフレーミング技術ではない。 「そもそもボールをストライクに見せることはできません。際どいボールをストライクに、ストライクを確実にストライクに取ってもらう技術です。プロのレギュラークラスでも下手な人はいますが、できて当たり前の技術。ただプロでは投手のボールの速さや変化球のキレが違うので、それにミットが負けて動かないいような工夫、微調整は必要になります。今回、フレーミングという言葉が話題になったのは、その技術が、メジャーから輸入されてきた日本で珍しいモノだからではなく、楽天の若い選手がまだ基礎的なキャッチング技術を習得できていないということなんです」 里崎氏は、こう厳しく指摘した。 楽天の1軍キャンプに抜擢された捕手陣は4人で、正捕手候補の太田が3年目の24歳、石原彪が5年目の21歳で1軍の経験不足。9年目の26歳の下妻貴寛も昨年は43試合に出場したが、巨人から移籍した28歳の田中貴也も含めて1軍経験は浅い。 さらに里崎氏は「フレーミングよりも大事なテクニックがあります」と重要テクニックを明かした。 「それは審判が見やすいキャッチングです。際どいボールをストライクにとってもらうには、ボールの球筋をホームベースを通過するまで、できるだけハッキリと審判に見てもらうことが重要なんです。キャッチング技術だけでなく、頭の位置、姿勢、ミットと体の距離、ボールを取るミットの前後の位置まで工夫しなければなりません。そのためには常に審判とコミュニケーションをとることが必要になってきます」 里崎氏は、現役時代、審判とよく喋るようにしていた。 「今のなら見えますか」「きょうは見やすかったですか」などと常に話しかけた。そしてボール、ストライクの判定には、決して文句は言わず、どこかに「貸し」を作っておく。里崎氏が一流捕手として評価される頃には、審判から「サトのキャッチングが一番見やすい」と声をかけてもらえるようになったという。 フレーミングの言葉だけが独り歩きしてしまっているが、里崎氏は、こんなメッセージを送る。 「捕手に必要な技術は、捕る、止める、投げるの3つです。フレーミングは、そもそも捕る技術の一部門にすぎません。加えて捕手は打たないと使ってもらえないし一流とは呼ばれないんです。そこははき違えないようにするべきですね」 なるほど納得。楽天の捕手陣だけでなく一流を目指すキャッチャーは心して聞いておくべき金言かもしれない。