【Bリーグ】秋田ノーザンハピネッツ最年長・田口成浩のリーダーシップ「みんなを支えて、チーム一丸となって」【バスケ】
苦しい場面でチームに火をつけた連続3Pシュート
サンロッカーズ渋谷のホーム、青山学院記念館に乗り込んだ秋田ノーザンハピネッツは、ゲーム1に77-65で勝利。本日のゲーム2は71-78で落としたものの、開幕からのアウェイ4連戦を2勝2敗で終え、次節でいよいよホーム開幕戦を迎える。 ゲーム2は序盤でSR渋谷に走られた。 ジョシュ・ホーキンソンに先制の3Pシュートを許すと、攻防の要となるタナー・ライスナーが早々に2ファウルを犯しベンチへ。田中大貴のドライブやターンオーバーからケビン・ジョーンズに豪快スラムダンクを許すなど僅か3分で2-12とされ、たまらずタイムアウトをコールした。タイムアウト明けは落ち着きを取り戻してスコアを伸ばしていくが、要所で相手に速攻を出されるなど15-24で1Qを終えた。 2Qは秋田のアイデンティティであるディフェンスが機能し、SR渋谷の得点を抑える。しかし、逆にこの数シーズンの課題となっていたオフェンスでは、なかなか攻めるポイントを見つけ出すことができず。一時14点ビハインドと差を広げられた。 悪くない試合運びながら、点が取れない──そんなもどかしい時間帯を打ち破ったのは、チーム最年長34歳の田口成浩だった。 残り2分24秒でこの日2本目の3Pシュートを沈めると、その1分後に再び3P。田口の連続3Pが伝染するように、続くポゼッションでライスナー、さらに残り9秒には赤穂雷太とチームとして4本連続で3Pシュートをヒット。4点差(32-36)に詰め寄る最高の形で前半を締めくくってみせた。 後半にはオールコートプレスでSR渋谷のミスを誘い、前半は絶不調だったガディアガ モハマド アルバシールもチームの勢いに触発されるように連続3Pをヒットするなど、一時逆転する場面もあった。最終的には勝負どころで船生誠也やジョーンズ、ホーキンソンらのオープンスリーを生み出したSR渋谷が勝利したものの、オフェンスの糸口をつかむという意味では、秋田にとっては悪くない内容の試合となったことだろう。 「惜しかったです。見てのとおり出だしがもったいなかったです。最後にああいう展開に持ち込めたということは、最初からそれがやれていれば勝つチャンスがもっと上がっていたということかなと思います。ただ、カムバックして接戦に持っていけたことは良かった。ディフェンスは効いていたと思いますが、オフェンスでアツくなってしまって一人で打開しようとするところがあったので、一つのスクリーンなどのズレをもっと有効に使えれば、(より良い)チームオフェンスができたのかなと思います」 田口をこう試合を総括した。 田口の言葉のとおり、ボールがしっかりと回り、デザインプレーで放てていた3Pはよく入った。14/30で成功率46.7%はすばらしい数字だ。一方で、個でクリエイトしようとした場面はターンオーバーで終わる場面が多く、ターンオーバーから13得点を献上した。 前田顕三HCも「しっかりとバウンスバックしてゲームをひっくり返したところまでは非常に良かったし、選手たちがファイトしてくれたことにチームの成長を感じた」としつつ、オフェンスを課題に挙げた。「今はまだ試している段階で、ラインナップが多すぎるので『これだ』というものはないです。自由にやり過ぎてしまうとシュートが入らない。そこをコントロールしながら、出ているメンバーによって『これでいこう』と決めています」 秋田が目指すのは、リーグ全体のトレンドになっているピック&ロールやインサイドのプレーを主体にせず、ディフェンスから機動力を生かして展開するオフェンスだ。絶対的なインサイドの得点源はいないが、日本人選手も外国籍選手も足を動かせて3Pを打てる。だが、今はその特性がチームの武器と言えるレベルまでは研ぎ澄まされていない印象だ。 戦術面とチームケミストリーの両面を高めていく。そこで重要になってくるのが田口の存在だろう。 この2試合で合計6/11(54.5%)の高確率で3Pを決めるなど、ベンチから頼もしい活躍で結果を残している。前述したとおり田口は今季チーム最年長。昨季までは古川孝敏という声でもチームを引っ張れる先輩がいたが、今はそうではない。田口は今季の自身の立ち位置についてこう語る。 「古さん(古川)が抜けて、個人的にはかなりショックが大きかったのですが、その中で自分が何をしなきゃいけないか。『古さんがいなくなったから、もっと自分が古さんのポジションを』ではなく、僕には僕なりのやり方があると思っています。過去にはキャプテンもやっていましたが、若い頃に担ったキャプテンではなく、年を重ねて経験をしてきた中でのキャプテンシーがあります。それは、僕のキャラクターを使いながらみんなを盛り上げていくこと。その中で今日のような接戦になったときに僕がシュートで引っ張っていけたのは良かったと思います。みんなを支えて、チーム一丸となって。今日のような点差もみんなで詰めていくのが秋田のバスケなので、そういうところを1試合、1試合積み上げていけたらと思います」 若手時代はプレーで盛り上げて、オフコートでも明るい性格でクラブの太陽のような存在だった。千葉ジェッツに移籍してからはよりディフェンスや、1本のシュートに対する価値を向上させてきた。そして、秋田に帰ってきて4年目の今季はこれまでの役割に加えてチームのバランスを取るベテランシップが加わった。 この試合で秋田らしくハッスルした赤穂や中山拓哉、熊谷航ら後輩たちにも、全幅の信頼を寄せていると田口は言う。 「本当に頼りにしていますし、彼らがああいうふうにハッスルしてくれることでチームに勢いを与えてくれます。そこは彼らが若い頃に経験した中で、何というか…良い味が出てきたような感じだと思います。もっともっと自分に自信を持ってやっていくことで、より彼らの個性が出ると思っています。僕にないものをみんな持っているので、自分の良さをみんなが出し合って良いバスケをしたいです」 田口の活躍ぶりを、そしてチームの成長を追いかけていきたい。
文・写真/堀内涼(月刊バスケットボール)