ウォン相場1ドル=1400ウォンに迫る…緊張しない韓国外為当局
「1ドル=1400ウォン」は超えてはならない境界線だろうか、ドル高時代に受け入れなければならない「ニューノーマル」だろうか。最近為替相場が再び1ドル=1400ウォン水準を脅かして火が付いた議論だ。 ウォン相場は先月25日に取引時間中1ドル=1390ウォンまでウォン安が進んだ。3カ月ぶりのウォン安水準だ。韓国銀行によると4-6月期のウォン相場は1ドル=1371ウォンで、1-3月期の1329ウォンより42ウォンのウォン安となった。2009年1-3月期の1418ウォンから15年ぶりのウォン安水準だ。 ウォン相場は韓国経済の体力を反映する。7-9月期にショックに近い前四半期比0.1%という経済成長率を記録した影響を受けた。海外では日本で自民党が衆議院選挙で惨敗し、イスラエルがイランを空爆した余波で中東リスクが大きくなりドル高をあおった。 何より5日に行われる米大統領選挙をめぐる為替相場の見通しが不透明だ。新韓銀行のエコノミスト、ペク・ソクヒョン氏は「トランプ前大統領が当選する場合(拡張財政政策で)追加利下げが先送りされ再度ドル高ウォン安要因として作用しかねない」と話した。ハナ金融研究所のチン・オクヒ研究員は10-12月期の為替相場をハリス副大統領が当選する場合、には1ドル=1310~1400ウォン、トランプ氏が当選する場合、1ドル=1350~1450ウォン台と予想する。 1ドル=1400ウォンは外為当局が介入する「マジノ線」と見なされる。為替相場が1400ウォンを超えたのは1990年に為替相場変動制を導入してから通貨危機のあった1997年、世界的金融危機があった2008年、レゴランド問題と米国の利上げがあった2022年の3回程度だ。4月にウォン相場が1400ウォンに迫ると外為当局がすぐに介入した理由だ。 だが最近「あの時は正しかったが、いまは違う」という形で政府の認識に微細な変化の兆しがみられる。崔相穆(チェ・サンモク)経済副首相兼企画財政部長官は先月22日のニューヨーク特派員懇談会で「1400ウォン台の為替相場をニューノーマルとみるべきか」という質問に、「現在の1400ウォンは過去の1400ウォンとは違うとみなければならない。(現在のドル高は)通貨危機当時のドル高と質的に違う」と答えた。ウォン相場が1400ウォン台であっても防衛する意向はないという趣旨で受け止められ議論になった。 韓国銀行の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁も先月25日に為替対応と関連し「ターゲット(特定の為替相場目標値)より変動性に重点を置いている」と話した。最近「過去の通貨危機と違いいまは韓国が(ドル債務国でなく)債権者であるため大きく心配する理由はない」と話したことと合わせて為替対応が過去とは変わったという解釈が出てきた。 為替当局の態度が変わったのは米国経済が堅固な上に過去の危機と比較できるほど外部に大きな経済衝撃がないためだ。外貨準備高4000億ドル以上で世界9位など韓国経済の健全性指標も不安ではないようにみえる。その上為替相場は相対的だ。ウォンだけでなく円、人民元、ユーロなどがともに劣勢だ。ウォン相場が他の通貨と比べて下がっているならば問題だが、全方向的なドル高の影響ならば話が変わる。 だが韓国は対外依存度が高く為替危機に弱い点も考慮しなければならない。決定的な外部衝撃がないのにドル高で心配することにむしろ危機意識を持たなければならないという指摘も出る。ウォン下落が経済のファンダメンタルズ(基礎体力)低下と関連するならば軽く見る問題ではない。 梨花(イファ)女子大学経済学科の石秉勲(ソク・ビョンフン)教授は「外為当局の発言が市場に及ぼす影響が大きいだけに慎重でなければならない。為替相場1400ウォンの基準線が簡単に崩れる場合、市場に誤ったシグナルを与えかねない」と懸念する。