EV失速で「世界ハイブリッドシフト」が始まった!
――なるほど。 山本 ちなみに先日、累計販売台数1600万台超を誇るメルセデス・ベンツの新型Eクラスに試乗しました。パワートレーンはマイルドハイブリッド車(ガソリンモデル&ディーゼルモデル)、そしてプラグインハイブリッド車と、全車電動化されました。 ――メルセデスのハイブリッド車! 試乗の感想は? 山本 驚いたのはプラグインハイブリッド車です。これまではギクシャクしたフィーリングやEV航続距離の短さなどから、仕方なく用意しました的な印象が強かったのですが、新型は本気度が違います。 ――具体的には? 山本 力強さはもちろん、日常はほぼEVとして使える112㎞のEV航続距離や日本のハイブリッド顔負けの滑らかなフィーリングなど、「積極的に選びたい!」と思えるモデルに仕上がっていました。今後、メルセデスはこの技術をさらに磨いていくのでしょう。 ■EVの市場シェアは最大でも3割 ――世界的にハイブリッドシフトはフル加速しますかね? 山本 昨年、米国でハイブリッド車は約124万台売れました。この数字は前年比65%増です。当然、世界中の自動車メーカーがシェア獲得に動くと思います。 ――ちなみに世界初の量産ハイブリッド車であるプリウスが誕生したのはいつでした? 山本 1997年で、トヨタのハイブリッド車は世界累計2000万台超を誇ります。 ――見方を変えると、27年たってようやく世界の自動車メーカーがハイブリッド車に目を向けてきた? 山本 実は2019年にトヨタは、ハイブリッドの特許を2030年末まで無償で提供すると発表しているんですよ。 ――なるほど。遠い未来はともかく、現状は充電網や航続距離に不安のないハイブリッド車の優位は続きそう? 山本 これまで多くの新聞や経済メディアがトヨタのハイブリッド車について、「日本だけのガラパゴス技術」とか「EVシフトが加速している今、ハイブリッド車はオワコン」などと揶揄してきました。しかし、自動車業界を長年取材してきた私からすると、脱炭素の現実解としてハイブリッド車はこれから世界中で人気マシマシの予感しかない。 ――EVの今後はどうなりそうですか? 山本 トヨタの豊田章男会長は、「EVの市場シェアは最大でも3割。残りの7割はハイブリッド車や燃料電池車、水素エンジン車などになる。エンジン車は必ず残ると思う」と予想しています。 ――ふむふむ! 山本 ただ、開発現場を取材していると、EVの技術は日進月歩を超える勢いで進化しています。今後も私は"全方位"で自動車業界の取材を続けていきます。お楽しみに! 写真/時事通信社 写真提供/メルセデス・ベンツ トヨタ自動車 BMW 撮影/週プレ自動車班 望月浩彦 宮下豊史 山本シンヤ