EV失速で「世界ハイブリッドシフト」が始まった!
――ちなみに米国のEV需要が伸び悩んでいるって噂はマジなんスか? 山本 ゼネラルモーターズやフォードのEVは長期の在庫化に歯止めがかからず、戦略の見直しを行なっています。 ■なぜ消費者はEVを購入しないのか? ――テスラとEV販売バトルを繰り広げる中国BYDの状況はいかがです? 山本 業績自体は上がっていますが、その内訳を精査すると、プラグインハイブリッド車の伸びが大きく貢献しています。要するにBYDはEV一本足打法のメーカーではないんです。 ――欧州EVの状況は? 山本 欧州勢が当てにしていた世界最大の自動車市場である中国で苦戦を強いられています。しかも、昨年12月にドイツは財源の問題からEVの補助金を打ち切ってしまった。 ――欧州勢の具体的な動きは何かあります? 山本 今年2月に独メルセデス・ベンツのオラ・ケレニウスCEOが2030年の全新車販売EV化の延期を発表しました。また、中国の吉利汽車(ジーリー)と共同開発する新型エンジンについても言及しています。 ――つまり、EVに傾倒してきたメルセデスが前言を撤回したって話ですか? 山本 それは大きな間違い。そもそも3年前にメルセデスは「市場が許すなら」という注釈付きでEV化の目標を掲げました。 ところが、日本の新聞や経済メディアがそこには触れず、センセーショナルに報道したことで、間違った認識がひとり歩きしてしまいました。メルセデスの言葉を借りれば、「今はEV化を市場が許さない状況」という話になります。 ――そういえば、仏ルノーのEV新会社アンペアはどうなっています? 山本 ルノーは「市場環境が適さず」という理由で、今年前半に上場する計画を中止。ルカ・デメオCEOも「(上場の)見送りが妥当」とコメントしていますね。 ――つまり、EVシフトが世界的に崩れ始めている? 山本 いや、崩れ始めたわけではなく、すべての内燃機関をEVへと置き換えるには、まだ時期尚早という話です。エンジン車とEV、どちらも得意不得意がある。なので、適材適所で活用しながら段階的に移行する感じかと。