EV失速で「世界ハイブリッドシフト」が始まった!
――なぜ、世界中の消費者はEVに振り向かないんスか? 山本 EVが本当に魅力的で万能な商品であるなら多くの消費者はとっくに飛びついているはずで、今はそうではないというシンプルな話です。 ――もう少し言うと? 山本 確かに以前より価格は安くなってきましたが、EVはエンジン車より高額ですし、充電網や走行距離に関して不安な点も多い。購入できる人や、そういう不便さもいとわないアーリーアダプター(早期導入者)はともかく、現時点で一般の人が安易に手を伸ばせる商品だとは言い難いです。 ■実は欧州勢もハイブリッドを用意 ――一方、世界販売で絶好調なのが、"脱炭素の現実解"と呼ばれるトヨタのハイブリッド車です。具体的な数字というのは? 山本 昨年、世界でトヨタのハイブリッド車は342万台を販売し、前年比3割増をマークしました。今年に入ってもその勢いは止まりません。 ――各自動車メーカーはハイブリッド車の開発を急ピッチで進めているらしいスね? 山本 4月4日、フォードは2030年までにガソリンモデルの全車種にハイブリッド車を導入すると発表しました。また、韓国のプレミアムブランドであるジェネシスもハイブリッド車の開発をスタートさせています。 ――いわゆるEVシフトが騒がれる中で、ハイブリッド車をしっかり用意していた海外ブランドもあるそうで? 山本 ルノーは欧州勢で唯一となるフルハイブリッド車を持っていますね。 ――ほかには? 山本 世界販売台数第4位の規模を誇る欧州ステランティスも準備万全。実はCEOのカルロス・タバレス氏は、元日産の副社長というキャリアの持ち主。当然、ハイブリッド車の大切さを知っているはずなので、欧米14のブランドを持つステランティスにはEVはもちろん、マイルドハイブリッド車、プラグインハイブリッド車も用意! ――独BMWも同様とか? 山本 もともと、BMWのオリバー・ツィプセCEOは「EV一択ではなく全方位」と語っています。ちなみにBMWには48Vマイルドハイブリッドディーゼルエンジン車もあります。 ――全方位戦略を取っている自動車メーカーはトヨタだけだと思っていました。 山本 投資家にアピールする上で「EV化」というのは最強ワードですからね。ただ、生き馬の目を抜く自動車業界、どのメーカーも水面下でちゃんとあらゆる可能性を模索していますよ(笑)。