適応障害で休職した教員が復職後に手放したこと ゆきこ先生の回復を早めた「校長先生の言葉」
「認めてもらわなければ」と走り続けた初任者時代
文部科学省が2023年12月に公表した「令和4年度公立学校教職員の人事行政状況調査」によると、教職員の精神疾患による休職者数は6539人で過去最多となった。休職には至っていないものの、疲れ切っている教員も少なくないだろう。今、そうした教員たちに寄り添うのが、「ゆきこ先生」こと渡邊友紀子氏だ。適応障害で休職した経験を基に、SNSを通じて教員の相談に乗っている。渡邊氏自身は休職を機に、働き方をどのように見つめ直し、現場に復帰したのだろうか。 【写真】インスタグラムのフォロワー6.6万人、教員の悩みに寄り添う「ゆきこ先生」 渡邊氏は現在、公立小学校の非常勤講師をしながら、「ゆきこ先生」の愛称でインスタグラムを中心にSNSで悩める教員の相談に乗るほか、私立小学校のインスタグラムの運用や各種講演などさまざまな活動をしている。小学5年生と1歳の子どもを育てる母親でもある。 幅広く活躍する渡邊氏だが、適応障害を発症して休職した経験がある。ある朝学校に行けなくなってしまったというが、「しんどさ」は突然生まれたわけではない。今思えば、初任の頃から苦しさを抱え続けていた。 キャリアのスタートは、大学を卒業してすぐの2015年春。結婚の予定があった関係で、横浜市から婚約者が住む福岡市に移って採用試験を受けた。合格を勝ち取り、晴れて小学校の教員となったが、そこからの4年間は「修行期間だった」と渡邊氏は振り返る。 「自閉スペクトラム症の弟を取り巻く環境をずっと何とかしたいと思っていて。そんな自分は教育現場なら役に立てるのではと教員を目指しました。合格したときはとても嬉しかったです。でも、いざ働き始めると、子どもがうるさければ厳しく指導すべきなどさまざまな決まりがあり、大学時代に見聞きしていた学校像とはギャップが大きく驚きました。しかし、わからないことばかりで何事もうまくいかないため、自分がやりたいと思っていたことはいったん捨て、先輩のやり方を踏襲してまずは認めてもらえるようにしなければと、がむしゃらに走り続けました」 今の自分をつくる大切な時間ではあったが、苦しかった。その間、プライベートでは結婚と離婚を経験。初任者の満期である4年の任期を終えたのを機に、2019年に福岡市を離れた。