「長年紛争下のシリアには物資が行き届かない」現地で活動する国連UNHCR職員が訴える、トルコ・シリア大地震の過酷な現状
長年の紛争の影響で思うように進まない支援活動
――現在の支援活動はどのように進んでいるのでしょうか。 守屋由紀: トルコに関しましては、日本をはじめ多くの国々が救助隊を出したり、物資を届けたりと、さまざまな支援が行われていると思います。ただ、シリアは長年紛争状態にあるため、経済制裁を受けており、物が不足しているし、支援物資も届かない状態です。 また、そもそも建物の構造自体が日本のような耐震構造になっているわけではなく、紛争が長期化していたため、建物の修復もできていなかったりするのです。日本だと、地震のときは建物の中にいてくださいと言われたり、机の下にもぐったりしますよね。現地では、建物自体が危ないから、外に飛び出すっていうのが鉄則。それで逃げそびれたら危ないという感じだったと思います。そんな状態のところに地震が来たので、もうがれきだらけなんです。 ただ、現場から届く映像を見ると、重機でがれきを除去という感じではなく、手掘りしています。ロシアのウクライナ侵攻の影響かもしれませんが、支援救助活動をするにも重機がないとか、重機があったとしてもそれを動かすための燃料費が高騰していてなかなか買えないといった状況もあるのです。 ――長年紛争状態にあるシリアには、救援物資をどのように現地に届けているのでしょうか。 守屋由紀: やはり紛争状態ですから、シリア国内であっても移動するために複雑な許可申請が必要でした。ただ、この地震を受けてその点は緩和されているため、物資が入ってきたら必要とされているところに届けるための道筋はできています。 また、私たちが活動していたエリアでは、紛争状態だったこともあり、もともと必要な物資を備蓄していました。その点、不幸中の幸いと言いますか、スピーディーに物資を届けることができています。ただ、これにも限りがあるので、新たに物資を仕入れなければならない。経済制裁などの影響で海外から物資が入ってこないような状況で、現地では私どものような組織の活動に限られているので、いま寄付を呼びかけているところなのです。