2024年の日本株は「自己の売買動向」に注目【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)が解説します。
●株価上昇の1-3月期、主な買い手は自己や海外投資家、主な売り手は信託銀行や投資信託。 ●同期間、自己の買い越し額は海外投資家を上回ったが、裁定買い取引では説明が困難な金額。 ●4月以降、株価低調のなか自己は売り越しに転じており、今年の日本株は自己の動向に要注目。
株価上昇の1-3月期、主な買い手は自己や海外投資家、主な売り手は信託銀行や投資信託
日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)は、2024年1-3月期にそれぞれ20.6%、17.0%と、大きく上昇しました。背景には、企業業績の回復や、企業による資本効率改善への取り組みと開示の進展、さらに賃上げの継続など、日本株を取り巻く好材料が重なったことがあり、日経平均株価は3月22日に一時41,087円75銭をつけ、取引時間中の過去最高値を更新しました。 日本取引所グループが毎週公表している「投資部門別売買状況」をみると、この期間、主な投資部門のうち、自己(証券会社の自己勘定)が約4兆1,131億円、海外投資家が約3兆143億円、事業法人が約6,803億円、累計で現物を買い越しています(図表1)。これに対し、信託銀行は約4兆1,952億円、投資信託は約1兆8,877億円、個人は約8,154億円、累計で現物を売り越しています。
同期間、自己の買い越し額は海外投資家を上回ったが、裁定買い取引では説明が困難な金額
事業法人の買い越しは主に自社株買いと推測され、信託銀行の売り越しは年金ポートフォリオのリバランスによるものと考えられます。なお、興味深いのは、1-3月期において自己の累計買い越し額が、海外投資家を上回っている点です。一般に、証券会社が自己勘定で日本株のポジションを持つ場合は、顧客などの相対ポジションである場合が多く、証券会社単独で積極的にリスクを取るケースはほとんどないように思われます。 例えば、先物に買いが膨らみ一時的に割高となった場合、証券会社が先物を売って現物を買う「裁定買い取引」を実施すれば、自己に現物買いが計上されると考えられます。そのため、1-3月期において、主な投資部門(自己を除く)に4兆円程度の先物買いと、自己に同程度の先物売りがあれば、自己の現物買いは主に裁定買い取引によるものと推測されますが、図表1の先物売買状況をみる限り、そう考えるのは難しい状況です。
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