新年の被災地に響く「よいしょ」笑顔の住民 地震1年、輪島の地区唯一のスーパーで餅つき
能登半島地震の発生から1年となった1日午前、石川県輪島市町(まち)野(の)町(まち)地区の「スーパーもとや」で餅つきが行われた。「新年はみんなが笑顔になれるように」と、社長の本谷一知(かずとも)さん(47)らが、つきたての餅を被災者や買い物客らに無料で振る舞った。 地区唯一のスーパーマーケットでは、午前10時ごろに餅つきがスタート。「よいしょ、よいしょ」という掛け声に合わせ、本谷さんらが力いっぱい杵(きね)を振り下ろした。 つきたての餅は、地震で被災し休業中の地元の和洋菓子店「吉野屋」の3代目、吉野一吉さん(73)らが手際よく丸め、自慢のあんこやきな粉をまぶしていった。 「よくのびておいしい」と話したのは、地区の仮設住宅で暮らす東麻千子さん(73)。例年は自宅で餅を作り、三が日に雑煮で味わっていたが、住んでいた集落が地震の甚大な被害で「長期避難世帯」に認定され、今は自宅に戻る見通しさえ立たない。「今年は病気をせず、家族や近所の人と仲良く暮らしたい」と話した。 吉野さんの長男で4代目の博司さん(49)は、笑顔で餅をほおばる被災者らの姿を目にし、「お世話になった地元で頑張りたい」と決意を新たにしていた。 スーパーは昨年元日の地震後も休まず営業していたが、9月の記録的豪雨で2メートル近く浸水して休業。ボランティアらが泥のかき出しなどに協力し、11月に営業再開にこぎつけた。この日、午前8時に開店して客を迎えた本谷さんは「天気にも恵まれ、みなさんが笑顔になってくれてよかった」と語った。(吉田智香)