iPad Proが真の意味で”プロ向け”になったM4搭載モデルの意味
新しい進化の方向を定めたベンチマーク
現時点で筆者は、ロンドンにおけるデモンストレーションやハンズオンにおける感想を簡単に伝えているに過ぎない。実際にデバイスを用いてどのようなクリエイティブな作業ができるのかは、追って実機レポートすることにしたい。 また、iPad Proがどれほど素晴らしいものになったからといって、これ1つだけですべてのクリエイティブな作業を完結できるわけでもないと感じている。すべての作業を完結することもできなくはないが、本質的には、iPad Proが得意な領域で、その機能を手軽に、誰もが使いこなせるところが、新しいiPad Proのコンセプトにおけるもっとも大きなポイントではないだろうか。 今やコンピューターの技術が発達し、動画にしろ音楽にしろ、あるいは今後は、小説のような長文も、道具のサポートにより、クリエイターの発想次第で、品質の高い成果物をより簡単に作り出していくことができる世の中になっていくだろう。 たとえばかつて写真撮影を高い品位で行おうと思えば、照明環境をうまく作り、カメラを使いこなす知識を蓄積し、フォーカスの位置や被写界深度を強く意識しながら撮影し、それでも数日経過しなければその結果を確認することができなかった。 しかしデジタルカメラがそうした写真の世界を民主化したとも言える。もちろん手軽になることによる弊害はあったかもしれないが、写真という世界がデジタル化によって大きく変化した事は間違いない。より多くの人が写真撮影に触れることによって、新しい表現が生まれていった事は間違いないだろう。 筆者が現地での取材を通じて感じたのは、AI時代におけるコンテンツクリエーションの新しい基準をデバイスメーカーとして定めようとしているのではないかということだ。 もちろんM4搭載iPad Proは、極めて薄く、高性能で、凄まじく、美しいディスプレイを備えた素晴らしい端末である。この点において、議論は無い。価格は高いと感じるだろうが、その価値は十分にある。 しかし、物質的な端末の価値は、その時代によって変化するものだ。 道具である以上、それを購入すべきかどうかは、その人は何をしたいかによって評価は変化する。それ以上に大きな意味として筆者が感じるのは、コンテンツクリエーションの新しい分岐点なのだと強く発信していることだと思う。それをどう感じて、サードパーティーのエンジニアが新しいアプリケーションを提案し、ユーザがそれをどのように使いこなし新しい表現を生み出していくのか。 新しいiPad Proはデジタルクリエイターにとっての新しいベンチマークであり、新たなる出発点なのである。 Source: Apple
本田雅一