投資のプロが教える「増配」が期待できる企業の見極め方
「高配当株」を買っても増配するとは限らない
高配当株とは、一般的に年間配当利回りが4%を超える銘柄を指します。新NISAのスタート以降、高配当株を謳ったニュースや記事が氾濫しているため、「高配当株を買っておけば、増配によって配当金が増える」と考える人も多いでしょうが、必ずしも期待通りにはいかないものです。 高配当株を否定するつもりはありませんが、配当利回りが4%、5%を超えるような高配当銘柄が、常に市場にあることに対して、私は少なからず違和感を覚えています。 業績が堅調で、1株益が上昇することで増配を実現している企業であれば、市場が放置するはずがなく、買いが入ることで株価が上がり、配当利回りが下がることになります。 場合によっては、業績が悪化して株価が下がっていても、配当金を減配せずに出すことで高利回りになっている銘柄が「高配当ランキング」に入っていることもありますから、高配当株を買いたいと思うのならば、次のような4つの観点で、事前にチェックをする必要があります チェック1:配当性向が高いことで、利回りが良くなっていないか? 1株益が上昇していないにもかかわらず、1株配が高く、配当性向も高い場合は、近い将来に減配する可能性があります。減配すると、株価が維持できたとしても、配当利回りは低下します。多くの場合、株価も下落するという「二重苦」になりますから、その企業の還元策がなぜそうなっているのかを確認する必要があります。 チェック2:株価が安値で配当利回りがいい理由は何か? 株式市場では、企業の成長性を見込みながら株価が形成されています。株式市場から、1株益の上昇が見込められないと判断され、株価が低迷している状況で配当利回りが高い場合は、業種や業態を確認して、今後の1株益がどうなるかを検討することが大事です。 1株益が横ばいでも、利益の蓄積によって緩やかに株価が上がったり、どこかのタイミングで「見直し買い」(割安感のある株に買いが入ること)が入ったりすることで、株価が上昇するのが普通です。そうなっていないのならば、何らかの理由があるはずですから、投資は控えたほうがいいと思います。 チェック3:その年だけ「配当予想」が高くなっていないか? 「記念増配」や「特別増配」など、単年の配当で一時的に配当利回りが高くなっていることもありますから、株を買う前に必ず確認する必要があります。その後の還元策が同じ水準であれば問題はありませんが、内容によっては株価が大きく下落する可能性があります。配当利回りの高さだけで飛びつくと、意外な落とし穴があるので要注意です。 チェック4:特需があって1株配が高くなっていないか? その企業の業績が著しく向上するような特需(特殊需要)があって1株配が増加し、配当利回りが良くなっている場合は、その特需が終われば1株配は減少します。株価が1株配の下落を織り込んでいなければ、株価の下落と1株配の減少というダブルパンチに見舞われることもあるので、冷静に確認しておくことが肝心です。 様々なメディアで紹介されている「高配当ランキング」は、あくまで参考程度に考える必要があり、それを鵜呑みにするのは禁物です。配当株投資を進める上では、株価と1株配を基準とした配当利回りを参考にするのは有効な考え方ですが、「配当利回りが高いことには、何らかの理由があるのではないか?」という視点を持って考えることが大切なのです。