じつは「ビッグバンによって宇宙ができた説」は問題だらけ…残されたナゾと通説に挑む新理論を一挙紹介!
深刻な「平坦性問題」
その他、ビッグバン宇宙モデルでは、宇宙が膨張するにつれ、宇宙の時空の曲がり具合(曲率)のエネルギーが支配的になるという理論予想があります。しかし、観測される宇宙の曲率のエネルギーがとても小さくて、現在の宇宙の曲率が平らすぎるという「平坦性問題」なども深刻な問題として知られています。 また、宇宙の温度ゆらぎの起源について、ビッグバンは何も教えてくれません。熱平衡の火の玉の中の粒子の統計的なゆらぎでは、約10万分の1という大きさのゆらぎはつくれないのです。もっと小さいものしかつくれません。 加えて、宇宙初期に素粒子論との大統一理論を適用すると、宇宙年齢10- ³⁶秒(100京分の1秒の100京分の1)ぐらいのころに、モノポール(磁気単極子)と呼ばれる、とても重い磁石のような物体が大量につくられることが知られています。そのエネルギーは理論計算により、なんとダークマターの100兆倍以上多くなってしまって、現在の宇宙と矛盾してしまいます。 その場合、重力が強くなり、138億年よりもっと前につぶれてしまって人類は生まれないことになります。これは、「モノポール問題」と呼ばれます。 また、超対称性理論という新理論では、重力を媒介する重力子(グラビトン)の超対称性パートナーである、「グラビティーノ」という重い未発見の粒子の存在が予言されており、宇宙初期の火の玉の中でたくさんつくられるとされています。 超対称性理論は、そのように超対称性という、素粒子特有のスピンを入れ替える対称性をもつ未発見のパートナーがいると予言する理論です。グラビティーノはとても長寿命で、3分以上の寿命をもつ可能性があります。その場合、崩壊して高エネルギー光子を出してしまうことが予想されています。ちょうどビッグバン元素合成でヘリウムがつくられた後に崩壊するならば、高エネルギー光子がヘリウムを壊してしまい、観測と矛盾する危険性があります。これは「グラビティーノ問題」と呼ばれています。