「全ての国家の権利だが…」イラン元大統領が語った核開発の意義
「核開発は全ての国家の権利だ」。2005~13年にイランで強硬派政権を率いたアフマディネジャド元大統領は21年、毎日新聞のインタビューにこう話していた。欧米などがイランの核の軍事利用を懸念する中、イランはあくまでも民生目的だと主張してきた。当時のインタビューを再録する(年齢や肩書は当時のまま)。【テヘランで真野森作】 ――核合意はイランが核開発を制限する見返りに米欧が経済制裁を一部解除する内容です。これをどう見ますか。 ◆誤った悪い合意だ。イランと他の合意当事国とに課せられる義務のバランスがとれておらず、イランに一方的に不利な内容だ。そして、トランプ前米大統領によって米国は(2018年に)合意から離脱した。現実問題として核合意は既に終わっている。 ――米国の離脱後、イランは対抗措置として規制を超えるウラン濃縮などを進めてきました。イランは核を必要としますか。 ◆核開発は全ての国家の権利だ。その活用法の一つは(原子力発電による)エネルギー生産。医療分野などでも活用できる。しかし原子爆弾は人道に反し、非常に有害だ。世界は核兵器廃絶を実現すべきだ。(米国によって1945年8月に原爆を落とされた)広島と長崎の経験だけで人類にとってはもう十分だ。私は核兵器に強く反対する。最高指導者ハメネイ師や指導部も同じ意見だ。 ――イランが核兵器を作ることはありませんか。 ◆決して製造も使用もしない。核兵器はソ連崩壊も米国の覇権も阻止しなかった。私は核のみならず全兵器の消滅を望む。世界が進歩し、全ての国が友好と平和のうちに共存することを願っている。 ――21年1月に発足したバイデン米政権はイランに対話路線をとっています。米国についてはどう思いますか。 ◆最終的にはイランは米国との問題を解決するだろう。交渉の席でさまざまな問題を解決しようと決意するだろう。バイデン、トランプ両氏の政策に違いはない。私は2人に手紙を送り、世界各国に米国が与えている圧力や介入政策を変えるよう促した。 ――イランは21年3月、中国との25年間に及ぶ戦略パートナーシップ協定を結びました。中国との関係強化には反対ですか。 ◆私が反対しているのは協定(の詳細)が公表されないことについてだ。イランは(歴史的に)秘密協定には良い経験を持っていない。私は「協定がもし有害ならばイラン国民は受け入れないし、認めない」と発言した。(相手への)敬意、そして公正さに基づくものであれば、どんな種類の関係にも反対ではない。 ……………………………………………………………………………………………………… ◇アフマディネジャド氏とイラン核開発を巡る主な動き 2002年 イランの核開発疑惑が表面化 03年 国際原子力機関(IAEA)理事会がイランにウラン濃縮停止などを求める決議採択 05年 アフマディネジャド氏が大統領就任。敵対するイスラエルについて「地図から抹消されるべきだ」と発言 06年 国連安全保障理事会が初の対イラン制裁決議採択。その後何度も追加制裁決議 09年 オバマ米大統領就任。アフマディネジャド氏が再選 10年 IAEAが報告書で、イランが核兵器開発を進めている可能性を初めて指摘 13年 穏健派ロウハニ大統領就任。国際協調路線に 15年 イランが核開発を制限する「核合意」を米英仏独露中との間で締結 17年 大統領選にアフマディネジャド氏が立候補したが、事前審査で失格。ロウハニ大統領再選 18年 トランプ米政権が核合意離脱 21年 核合意復帰を目指すバイデン米政権が発足。イラン大統領選にアフマディネジャド氏が立候補したが、事前審査で失格。ライシ師初当選