「『罪を憎んで人を憎まず』は真理」 波乱万丈、自身も逮捕経験のある女性弁護士がうったえる「加害者」との向き合い方
●父の事業が失敗したことで「弁護士」を目指すことに
その後、学生時代から関わっていたNPOの職員となったが、改めて司法試験を受けようと思ったのは、2000年ごろ。 「父が事業に失敗して、家が競売にかけられ、保証人になっていた母親に2億円の請求書がきたんです。父は、経済的にゆとりのある母の実家に行っては1000万単位のお金を工面してもらうことを繰り返していました。 最終的に祖母が家を買い取り、両親は離婚しましたが、母のことが心配で、このときも弁護士さんに相談したんです。ただ、その人の対応があまり良くなかったので、それなら自分が弁護士になればいいと思い、NPOをやめて、改めて勉強を始めました」 幼いころから母親に暴力を振るう父親の姿を見ており、ずっと、自分が父親から母親を守らなければと思っていたという。 「うちは父のDVに対して、母と妹と私の女3人で支え合っている家庭でした。父はずっと私を無視して、あいさつもしないような人で。私が医者を志したのも、(医者になることで)父をはじめ、女性を下に見ている男性を見返したい、という気持ちがあったからかもしれません」 司法試験に向けて勉強を始めた小竹さんは、妊娠9カ月で旧試験を受験。このときは不合格だったが、子どもが2歳のときに開校したロースクールに入学する。 「旧試験が2度ダメだったこともあり、学校に通えば、子どもを保育園に預けられると思い、ロースクールに入学しました」 ロースクール修了後に新司法試験に合格、司法修習を経て、2008年に弁護士登録した。
●カウンセリングの手法を活かしている
家族相談士、産業カウンセラー、ゲシュタルト療法セラピスト。小竹さんの名刺にはこうした肩書が並んでいるが、弁護士の業務においても、カウンセリングの知識や手法を応用している。 「そもそも私の弁護士像は、法的な権利・義務でバシバシ争うものではなく、『対人援助職』として相談に乗る、というイメージだったので、カウンセラーとの連続性はありましたね」 カウンセリングを学んだのは、父親のトラウマによる男性不信があったからだという。 「父はなぜこういう人間になったのか。それはずっと、私の根底にある疑問でした。男性に対しても、相手に問題があるわけではないのに、父を投影して不信感を抱いてしまう。そんな自分の悩みと向き合おうと、出産後にカウンセリングを受けたんです」 自分の中にある未解決の問題、トラウマにきちんと向き合わないと人生をマネジメントできないのではないか。そんな気持ちで受けたカウンセリングに効果を感じた。 「私自身、家族の問題に起因してトラウマを抱えていましたが、人間の悩みの多くは家族をはじめ、対人関係から生じるものです。カウンセリングに効果を感じたこともあり、産業カウンセラーや家族相談士の養成講座も受けました」 家族の問題に目が向くのは家庭環境に加えて、お子さん、そして、自身がADHDの当事者であることも影響しているかもしれない。 「発達障害の人は、いわゆる"普通"から外れた行動をとるので、今の日本の社会ではどうしても理解されにくかったりします。親にとっても育てにくく、それゆえ養育者から虐待されて、居場所を失い、不登校になるなど、いろいろな問題が派生しやすいんです」 発達障害者は、動作性IQと言語性IQの開きが大きい傾向があり、できること・できないことのギャップが大きいと言われる。 小竹さん自身もその差が「30」以上あり、好きなことは集中力を発揮して成し遂げるものの、幼少期からみんなと同じことができず、先生から問題児扱いされていたという。 「必要なことは、周囲がその人の特性や適性を把握し、手助けすることです。本人は理由がわからずに苦しんでいるので、自分でも自分の特性を知り、周知するなどの調整ができれば、本人も心地よく生活できるのではないかと思います」