「取材源の秘匿」脅かし「権限のないデータ消去」も…鹿児島県警の捜索
これに対し、野川本部長は「隠ぺいを意図して指示を行ったことは一切ない」と否定したうえで、盗撮事件については5月に巡査部長を逮捕し、ストーカー事件については「被害者の気持ちを踏まえて2月に捜査を終結し、関係職員を処分した」と説明しています。一方、本田・元警視正は今年5月になって盗撮事件が立件されたのは「私が送った文書がきっかけになったと思う」と陳述しています。 ■「取材源の秘匿」尊重してきた捜査機関が一線を超える ではここから、二つの情報漏洩事件から浮かび上がった問題についてお話しします。 第一は、その捜査手法。「報道の自由」の侵害です。先ほど言ったように、鹿児島県警は「ハンター」のニュースサイトに県警の内部文書が掲載された情報漏洩容疑の関係先として代表の自宅に家宅捜索に入り、取材資料などを押収しました。 それは文書を漏洩したとされる巡査長の容疑の裏付けにとどまらず、パソコンのデータから別の告発文を見つけて、本田・元警視正の逮捕に至る捜査の端緒にもなりました。本田・元警視正が札幌市在住のジャーナリスト・小笠原淳さんに送った手紙の画像データが、ハンターのパソコンに残っていたからです。 ご存じの通り、報道機関にとって「取材源の秘匿」は「いかなる犠牲を払っても守るべきジャーナリズムの鉄則」で、日本新聞協会と日本民間放送連盟はその旨を発した2006年の声明で「隠された事実・真実は、記者と情報提供者との間に『取材源を明らかにしない』という信頼関係があって初めてもたらされる。その約束を記者の側から破るのは、情報提供の道を自ら閉ざし、勇気と良識をもつ情報提供者を見殺しにすることにほかならないからである」と表明しています。憲法が保障する「報道の自由」の根幹の一つで、捜査機関も最大限尊重し、慎重に対応してきました。日本は民主主義国家だからです。 ところが今回、ハンターの中願寺代表も小笠原氏も一切の捜査協力を拒む中、鹿児島県警は家宅捜索で押収した資料から、捜索容疑以外の取材源まで洗い出し、本田・元警視正を逮捕しました。強制捜査でネタ元を突き止める――明らかに一線を超えたやり方で、こんなことが許されたら、日本は報道の自由が担保されない国になります。