温泉「炭酸水素塩泉」に入浴すると腸内細菌のビフィズス菌を増やす可能性 九州大学らが発表
今回の研究内容への受け止めは?
編集部: 九州大学らによる研究グループが発表した研究内容への受け止めを教えてください。 甲斐沼先生: 温泉は長い歴史を通じて、健康の増進や病気の治療に利用されてきた経緯があり、わが国には10種類の療養泉(泉質)があり、それぞれ効能が異なるといわれてきました。異なるの温泉成分が健康な人にどのような影響を与えるかについてはこれまでほとんど解明されておらず、詳細な効果の検証が望まれていました。今回の研究結果から、炭酸水素塩泉への入浴行為が腸内細菌の変化およびビフィズス菌を増加させて健康効果を促進する可能性があり、それは泉質ごとに異なるということを示唆しました。こうした発見は、温泉の有する健康増進効果に新たな科学的根拠を提供するものであると考えられます。さらには、本研究を通じて、将来的には温泉療法を用いた公衆衛生の向上、温泉療法の発展、および地域活性化に貢献することが期待されます。
温泉に関する他の研究情報は?
編集部: 今回の研究テーマになった温泉について教えてください。 甲斐沼先生: 温泉に関する研究で論文が発表されているものはほかにもあります。例えば2016年に慶應義塾大学の研究グループは、炭酸水素塩泉の人体への影響を多角的に解析した結果を発表しています。この研究では、温泉水が血糖管理指標の1つである「血中グリコアルブミン値」を減少させることが明らかにされました。また、温泉水を飲用している間は解糖系が亢進している可能性や、肥満防止効果の期待できるChristensenellaceae科の腸内細菌が温泉水を飲むと増加することも報告されています。
編集部まとめ
九州大学らの研究グループは、温泉入浴前後の腸内細菌叢の変化を調べたところ、炭酸水素塩泉に7日間連続で入浴するとビフィズス菌の一種が有意に増加し、泉質ごとに腸内細菌叢に影響を与えることを明らかにしました。温泉文化がある日本らしい研究には注目が集まりそうです。
【この記事の監修医師】
甲斐沼 孟 先生(TOTO関西支社健康管理室産業医) 大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。2023年、TOTO関西支社健康管理室産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。